
飲食店の電気代はいくら?相場の目安・厨房と空調の削減方法・補助金まで徹底解説
「電気代の請求が想定より高い」「同じ規模の他店と比べて適正なのか」「厨房と空調のどちらから手をつければいいのか」。飲食店を経営していると、電気代についての疑問は次々と出てきます。
飲食店は、床面積あたりのエネルギー消費が大きい業種です。環境省の資料では、ファミリーレストランやファーストフードの消費原単位(床面積あたりのエネルギー消費量)は事務所ビルの6倍を超えます。それだけに、削減の余地も大きい領域です。
この記事では、自店の電気代の目安の出し方、電気の使われ方、費用をかけずにできる運用改善から契約の見直し・設備更新・補助金の活用までを、取り組む順番に沿って整理します。
この記事でわかること
- 自店の電気代の目安はどう出す?
- 電気代が高くなるのはなぜ?
- 費用をかけずにできる削減策と、設備投資・補助金の進め方
飲食店の電気代の相場:床面積から概算する
飲食店の電気代は、業態・席数・営業時間・厨房設備の構成によって大きく変わります。
業態別の電気代を示した公的な統計は公表されていません。ただし、床面積あたりの電力使用量の実測例は公開されているため、そこから自店の目安を出すことができます。
床面積あたりの電力使用量から概算する
農林水産省の資料に、床面積366㎡・年間営業時間3,300時間の居酒屋店舗の実測例が掲載されています。年間の電力使用量は約278,000kWhで、1㎡あたりに直すと年間約760kWhです。
省エネルギーセンターの省エネ診断事例にも、延床面積540㎡の居酒屋の実績があります。改善前の電力使用量は年間290,000kWhで、1㎡あたり年間約537kWhです。
この2件はいずれも個別の店舗の実績ですが、幅を持たせて1㎡あたり年間500〜800kWhを目安に置くと、自店の床面積から次のように概算できます。
1. 年間の電力使用量の目安(kWh)= 床面積(㎡)× 500〜800
2. 1ヶ月あたりの電力使用量(kWh)= 年間の目安 ÷ 12
3. 自店の平均単価(円/kWh)= 検針票の請求額合計 ÷ その月の使用量(kWh)
4. 月額の電気代の目安(円)= 1ヶ月あたりのkWh × 平均単価たとえば床面積100㎡の店舗なら、年間50,000〜80,000kWh、1ヶ月あたり4,200〜6,700kWh程度が目安になります。ここに自店の平均単価を掛けたものが月額の水準です。
平均単価は、検針票の請求額合計をその月の使用量で割って求めます。基本料金や燃料費調整額、再エネ賦課金を含んだ実勢の単価になるため、これらを別に足す必要はありません。契約している電力会社とプランによって変わるので、自店の直近の検針票の数字を使ってください。
参考:農林水産省「一般飲食店における省エネルギー実施要領」/省エネルギーセンター「省エネ診断事例 飲食業(居酒屋)」
業態によって何が変わるのか
上の原単位(床面積1㎡あたりの年間電力使用量)はいずれも居酒屋の事例です。業態が変われば、同じ床面積でも電力使用量は上下します。押し上げる要因と抑える要因を整理します。
カフェ・喫茶店:厨房規模が小さく調理機器も限定的。原単位は下振れしやすい
居酒屋・バー:冷蔵庫・冷凍庫・製氷機・食器洗浄機の常時稼働に夜間営業が重なり、原単位は上振れしやすい
ラーメン店:スープの煮込みでガスの比率が高く、電気の原単位は下振れしやすい(総エネルギーでは下がらない)
焼肉店・鉄板焼:卓上グリルと換気設備が上乗せされ、原単位は上振れしやすい
ファミレス・レストラン:早朝から深夜までの長時間営業で、空調と照明の稼働時間が長く、原単位は上振れしやすい
大型宴会場・ビュッフェ:大規模厨房と宴会場の空調・照明が常時稼働し、原単位・絶対額ともに大きくなりやすい売上高に対する電気代の比率を管理指標にしている店舗もあります。ただしこれも業態と立地で幅があるため、他店の数字と比べるより、自店の前年同月と比べるほうが実態をつかむことができます。
飲食店の電気使用量の内訳
自店の電気代を効率的に削減するには、どこに電気が使われているかを把握することが重要です。
手がかりになるのは、実際の店舗で用途別に計測されたデータです。
【実測例】厨房機器・その他42%・照明30%・空調23%・換気5%
相場の章で挙げた農林水産省の資料には、同じ居酒屋店舗(床面積366㎡・年間営業時間3,300時間・年間の電力使用量約278,000kWh)の用途別内訳も掲載されています。
用途 | 構成比 |
|---|---|
厨房機器・その他 | 42% |
照明 | 30% |
空調 | 23% |
換気 | 5% |
「厨房機器・その他」と照明で7割を超えます。ただし「厨房機器・その他」は主要3用途に入らない電力も含む区分のため、42%すべてが調理機器というわけではありません。機器ごとに見ると、店舗が手を入れられる対象は厨房まわり(調理機器・冷蔵庫・換気)と空調に集約されます。以下ではこの2領域を軸に、運用改善から設備更新までを順に整理します。照明は設備更新の章でLED化として扱います。
なお、これは業態の平均値ではなく1店舗の実測例です。また電力のみの内訳で、ガスは含まれていません。自店の内訳は、機器構成と営業時間によってこれとは変わります。
参考:農林水産省「一般飲食店における省エネルギー実施要領」

業務用冷蔵庫・冷凍庫の常時稼働
飲食店の電気代の隠れた主役が、業務用冷蔵庫・冷凍庫・製氷機です。これらは営業時間に関わらず24時間365日稼働し続けます。
業務用冷蔵庫は容量が大きく、家庭用と比べて消費電力も大きくなります。複数台を保有する店舗では、冷蔵・冷凍機器だけで電気代の相当部分を占めることもあります。
厨房の換気・排熱と空調は連動する
飲食店特有の構造として、厨房の換気・排熱と客席空調が相互に影響し合う点があります。
厨房で発生する熱を換気ファンで排出する一方、その換気で入ってきた外気を客席のエアコンが冷やし直します。内訳上は換気そのものが5%でも、その影響は空調の23%側にも乗っているという関係です。換気量と空調負荷のバランスを取ることが、この領域の削減の要点になります。
飲食店の電気代が高くなる5つの理由
冒頭で触れた原単位の差を、もう少し細かく見てみましょう。環境省が2004年に公表した資料では、業種別のエネルギー消費原単位はファミリーレストランが事務所ビルの約6.2倍、ファーストフードが約6.5倍となっています。
これは電気だけでなくガスを含む一次エネルギーの原単位で、調査は2001〜2002年のものです。それでも、飲食店が他業種よりエネルギーを多く使う構造は変わっていません。その理由は大きく5つあります。
①業務用機器の常時稼働
先に見たとおり、冷蔵・冷凍機器は営業時間と無関係に動き続けます。つまり売上がゼロの時間帯にも電気代が発生する構造で、休業日を増やしても比例して下がらない固定費に近い性質があります。稼働を止められない代わりに、庫内の使い方と機器の年式で差がつく領域です。
②営業時間の長さと夜間営業
ランチ営業・ディナー営業・深夜営業など、飲食店の営業時間は他業種と比べて長くなりがちです。空調・照明・厨房機器が動いている時間そのものが長いため、電気代が積み上がります。
③厨房の換気・排熱負荷
焼肉店・中華料理店・ラーメン店など、火力設備を多用する業態では、排熱のための換気ファンが営業中ずっと回り続けます。衛生と安全のために止められない設備であり、しかも先に見たとおり換気は空調側の負荷も押し上げます。この2つが重なる分、同じ席数でも電気代の水準は上がります。
④夏冬の冷暖房ピーク
客席の快適性を維持するため、夏冬の冷暖房使用は欠かせません。設定温度を大きく変えるとお客様の不満につながるリスクがあるため、安易に削減できない構造があります。
⑤店に合わない料金プラン
飲食店は、照明やコンセント向けの従量電灯と、業務用エアコンや厨房機器向けの動力(低圧電力)の両方を契約することが多くあります。店の使用パターンに合わないプランで契約していると、電気代がかさんでしまいます。
【すぐできる】コストゼロから始める電気代削減策
設備投資の前に、運用改善だけで取り組むことができる施策があります。費用負担なしで実施できるため、最初に取り組むべき領域です。
空調設定温度の見直し
環境省が推奨する室温の目安は、冷房時28度・暖房時20度です。お客様が不快に感じない範囲で設定温度を調整しましょう。
環境省は、エアコンの設定温度を1度緩和した場合の消費電力量の削減幅を、冷房時で約13%、暖房時で約10%と示しています。年間を通じた累積効果は大きく、コストゼロで始められる施策です。
ただしこの数値は、家庭用エアコン1台を想定した試算です。業務用空調や店舗全体での削減幅がこのとおりになるわけではないため、実際の効果は自店の検針票で確認してください。
サーキュレーター活用と空気循環
冷たい空気は下に、暖かい空気は上に溜まりやすい性質があります。サーキュレーターや扇風機で店内の空気を循環させると、空調の効率が上がります。
設定温度を控えめにしても快適な空間を保つことができるため、空調の電気代を抑えながら客席の快適さも維持できます。
エアコンフィルター清掃
エアコンのフィルターが目詰まりすると、空気の吸い込みが悪くなり、余計な電力を消費します。環境省は、2週間に1度のフィルター清掃で、目詰まりした状態と比べて冷房時で約4%、暖房時で約6%の消費電力の削減になると示しています。
こちらもエアコン単体の消費電力についての数値です。店舗全体の電気代がその分下がるという意味ではありません。
清掃は店舗スタッフでも簡単にできるメンテナンスです。2週間ごとのルーティーンに組み込むことで、確実な実行と継続的な効果につながります。
業務用冷蔵庫の運用改善
24時間稼働する業務用冷蔵庫の運用改善は、累積効果の大きい施策です。次のポイントを意識してください。
・冷蔵庫の食材の詰め込みすぎを防ぐ:冷気循環の妨げを避ける
・冷凍庫は逆に庫内を満たすほうが効率的:凍った食材が互いに保冷する
・開閉頻度を最小化する:扉の開け閉めごとに庫内温度が上昇する
・温度設定を最適化する:必要以上に低温にしない
・ドアパッキンを定期点検する:隙間があると冷気が漏れるいずれも費用はほとんどかかりません。日々の積み重ねが電気代削減につながるため、スタッフ全員で意識を共有することが大切です。
【見直し必須】電力会社・契約プランの見直し
運用改善と並行して早い段階で着手できるのが、電力会社・契約プランの見直しです。使用量が同じでも、契約する会社とプランによって電気代は変わります。

使用量を減らさずに着手できる施策
2016年4月の電力小売全面自由化以降、大手電力(旧一般電気事業者)以外にも多くの小売電気事業者が参入しました。現在は各社のメニューを比較して、自店に合う会社とプランを選ぶことができます。
空調を弱くしたり機器を買い替えたりせずに着手できる点が、この施策の特徴です。低圧契約・高圧契約のいずれも見直しの対象になります。
ただし削減額は、現在の契約内容と自店の使用パターン次第です。「何%下がる」と一律には言えないため、複数社の料金算定式に自店の年間実績を当てて比較してください。
参考:資源エネルギー庁「電力会社の切り替え方法」
切替時の3つのチェックポイント
電力会社を切り替える際は、料金単価の安さだけでなく、次の3点を必ず確認してください。
1. 燃料費調整額(燃料価格の変動を毎月の単価に反映する仕組み)の扱い:規制料金には基準燃料価格の1.5倍という上限があるが、自由料金には上限がない
2. 動力プランと従量電灯プランの最適化:飲食店は両方を契約することが多い
3. 時間帯別・季節別単価:店舗の使用パターンに合っているかを確認する最低でも3〜5社から見積もりを取り、自店の使用パターンに合ったプランを選定することが大切です。シミュレーションを活用すれば、契約前に試算できます。
新電力を選ぶときの倒産リスク回避
ただし、安さだけで選ぶのは危険です。2022年以降、新電力(電力自由化後に参入した小売電気事業者)の撤退・倒産が相次いでいます。契約先が撤退した場合、結果的に切り替え前より高い電気代を払うことになる可能性もあります。
リスクを避けるには、資本背景・自社電源の有無・料金の透明性・情報開示の充実度を確認してください。詳しくは新電力の倒産リスクの記事で解説しています。
契約容量・デマンドの見直し
使用量ではなく、基本料金の決まり方そのものを見直す方法もあります。ただし低圧と高圧で仕組みが違うため、自店がどちらの契約かを先に確認してください。
低圧電力(動力、原則50kW未満)の契約電力は、設置している電気機器の総容量か、契約主開閉器の定格電流にもとづいて決まります。例えば、主開閉器契約に切り替え、より小さい定格の開閉器(いわゆる電子ブレーカー)を設置することで、契約電力を下げることができます。
高圧の場合は実量制と言って、実際の最大需要電力で契約電力が決まる方式です。契約電力は、当月を含む過去1年間の各月の最大需要電力(30分ごとの平均使用電力の最大値)のうち最も大きい値で決まります。ですので、例えば電力使用量のピークを抑えるデマンド管理装置を導入することで、基本料金を抑えることができます。
削減方法については、こちらの記事もご参照ください。
【中期投資】設備更新による電気代削減
運用改善と契約の見直しで成果が見えてきたら、次のステップは設備更新です。初期費用は必要ですが、長期的な削減効果を見込むことができます。
LED照明への切り替え
LED照明への切り替えは、設備投資の代表例です。環境省は、電球形LEDランプはほぼ同じ明るさの一般電球(白熱電球)と比べて約85%の省エネになると示しています。すでに蛍光灯を使っている場合の削減幅は、これより小さくなります。
LED照明の利点は、消費電力の削減だけにとどまりません。寿命が長いため交換頻度が減り、メンテナンスコストも下げられます。
先ほどの実測例で照明が30%を占めていたように、長時間営業で照明の稼働時間が長い業態では、特に効果が大きくなります。
省エネ業務用エアコンへの更新
業務用エアコンの更新も、大きな削減効果を見込むことができる施策です。
ダイキン工業の導入事例では、大阪府高槻市のラーメン店が15年以上使用していた業務用エアコンを最新の省エネ機種に更新しています。5馬力から6馬力へ容量を上げながら、更新前後の同じ月で電気使用量が減ったと紹介されています。
10年以上前に導入したエアコンは、最新の高効率機種と比べて消費電力が多い可能性があります。更新時にはサイズや能力の見直しも含めて、シミュレーションを行うことをおすすめします。

省エネ業務用冷蔵庫への更新
業務用冷蔵庫の更新も、見落とされがちですが削減効果の大きい施策です。削減幅は買い替え前の機種の年式によって変わります。
メーカーの公表値では、同じ間口の縦型冷蔵庫で2000年発売機種と比べて約74%、2008年発売モデルと比べて約31%の消費電力量の削減という例があります。20年以上使っている機器ほど、更新の効果が大きくなります。
近年は、自然冷媒を採用した業務用冷蔵庫も登場しています。フロン類を使わない機器はフロン排出抑制法の第一種特定製品に該当しないため、定期点検や点検記録の保存といった管理者の義務の対象外となり、管理負担も軽くなります。
参考:フジマック「コスト削減と環境への配慮」/環境省・経済産業省「フロン排出抑制法 第一種特定製品の管理者等に関する運用の手引き(第3版)」
活用できる補助金制度
設備投資には、国や自治体の補助金を活用できます。飲食店が使いやすい代表的な制度を整理します。
ただし補助金の名称・補助率・対象設備は年度や公募回ごとに変わります。ここに挙げた内容も、申請前に必ず現行年度の公募要領で確認してください。
中小企業省力化投資補助金
「中小企業省力化投資補助金」は、人手不足の解消を目的に、省力化につながる設備の導入を支援する制度です。省エネ自体が要件ではありませんが、古い機器を新しい省力化機器に入れ替える過程で消費電力が下がるケースがあります。カタログ注文型と一般型の2類型があります。
1.カタログ注文型:登録済みの製品カテゴリから選んで申請する。補助率1/2以下
(対象カテゴリの例:スチームコンベクションオーブン、自動フライヤー、配膳ロボット、清掃ロボット、券売機、自動精算機)
2.一般型:個別の現場に合わせた省力化投資が対象古い厨房機器を省力化機器に更新すると、業務効率化と合わせて消費電力が下がる場合もあります。ただし削減幅は機種と使い方によるため、カタログの仕様値で確認してください。カタログ注文型は申請手続きが比較的シンプルなため、小規模店舗でも活用しやすい制度です。
なお、登録製品は随時追加・入れ替えがあります。検討している機器が対象かどうかは、公式サイトの製品カタログで確認してください。
参考:中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助金」/中小企業庁 ミラサポplus「中小企業庁担当者に聞く『中小企業省力化投資補助金[カタログ注文型]』」
省エネ・非化石転換補助金
高効率空調・LED化・業務用ヒートポンプ給湯器などの設備更新には、経済産業省の省エネ関連の補助金を活用できます。
令和7年度補正予算では「省エネ・非化石転換補助金」として公募されており、設備単位型の補助率は1/3以内、電化・脱炭素燃転型の更新・改造は1/2以内です。交付規程上の正式名称は「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」です。
公募期間が限定されているため、設備更新の計画と公募スケジュールを連動させることが大切です。商工会議所や省エネルギーセンターへの相談も活用してください。
参考:環境共創イニシアチブ「令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)」
自治体の小規模事業者向け補助金
各自治体にも、中小事業者向けの省エネ補助金が用意されています。東京都・大阪府などの大都市圏では、独自の制度があるケースが多くあります。
自治体の補助金は、対象が地域内の事業者に限られるぶん、国の制度より競合が少ないこともあります。ただし予算規模・補助率・締切は自治体ごとに大きく異なります。自店の所在する自治体の制度を必ず確認してください。
飲食店の電気代削減を成功させる4ステップ
数多くの施策の中から、何をどの順序で実行すべきでしょうか。実効性のあるアプローチを4ステップで整理します。
STEP1:現状把握(電気使用量の見える化)
最初のステップは、自店の電気使用状況を把握することです。検針票を確認し、過去12ヶ月の電気使用量・電気代・契約電力を整理しましょう。高圧受電なら検針票に最大需要電力(デマンド値)が記載されています。低圧契約は実量制ではないため、契約電力の欄の数値を確認してください。
月別・季節別の使用パターンを把握することで、削減施策の優先順位が見えてきます。
STEP2:施策の優先順位設定
現状把握ができたら、削減施策を「投資回収期間」と「削減効果」の2軸で評価します。コストゼロの運用改善から始めて、低投資・中投資へと段階的に進めるのが効率的です。
STEP3:段階的に実行
優先順位に従って、段階的に施策を実行します。一般的には次の順序が効率的です。
1. 運用改善(空調設定・冷蔵庫運用・フィルター清掃)→即時実行
2. 料金プラン・電力会社の見直し→1ヶ月程度で実行
3. LED化・契約容量の見直し→3〜6ヶ月で実行
4. 業務用エアコン・冷蔵庫の省エネ機器更新→半年〜1年で実行STEP4:効果検証と継続的改善
施策実行後は、月次で電気代をモニタリングし、効果を検証します。施策と効果を関連付けて分析することで、次の改善ポイントが見えてきます。
電気代削減は一度きりの取り組みではなく、継続的な改善活動として位置づけることが成功のカギです。
【GX視点】脱炭素経営でブランド価値を高める
電気代削減を単なるコスト削減ではなく、ブランド価値向上の機会として捉える発想も大切です。
再エネ電力プランの活用
近年、再生可能エネルギー由来の電力を提供する小売電気事業者のプランが増えています。自家発電設備を持たない店舗でも、契約を切り替えるだけでCO2排出量を下げることができます。
料金は従来のプランと比べてやや高めに設定されているケースもあります。上乗せ分と発信材料としての価値を見比べて判断する領域で、環境への配慮を重視する顧客層へのアピール材料として活用できます。
Z世代・インバウンド客への訴求
Z世代やインバウンドの旅行者は、サステナビリティへの意識が高い傾向にあります。脱炭素経営や省エネの取り組みを店舗の発信材料に組み込むことで、新しい顧客層への訴求につながります。
「再エネ電力使用店」「省エネ取り組み宣言店」といった発信は、競合との差別化要素になります。サステナビリティを軸にした店舗ブランディングは、長期的な顧客ロイヤリティの向上にも貢献します。
飲食店の電気代に関するよくある質問
Q. 小規模飲食店でも太陽光発電は導入できますか?
店舗の屋根面積や立地条件によりますが、PPAモデル(第三者所有)であれば初期費用ゼロで導入が可能なケースもあります。
ロードサイド店舗や郊外型店舗で屋根面積が広い場合は、特に検討する価値があります。テナント入居型の店舗では、ビルオーナーとの調整が必要になります。
Q. 業務用エアコンの省エネ機種に更新する目安は?
導入から10年以上経過している業務用エアコンは、更新を検討する目安となります。最新機種は10年以上前のモデルと比べて消費電力が抑えられているため、電気代の削減と冷暖房性能の向上を同時に実現できます。
補助金の活用と組み合わせれば、投資回収期間も短縮できます。
Q. 夏場の電気代を抑える効果的な方法は?
夏場に電気代が増える分の多くは、空調によるものです。室温28度を目安にした運用、サーキュレーターの活用、フィルター清掃、日射調整(カーテン・ブラインド・遮熱フィルム)の組み合わせが効果的です。
営業時間外の空調停止も、忘れずに徹底してください。
Q. 電力会社の切り替えに違約金はかかりますか?
現在契約中のプランに違約金や最低利用期間が設定されている場合、契約期間内に解約すると違約金が発生する可能性があります。
違約金の有無や金額はプランによって異なります。切り替え前に、現在の契約の供給条件説明書や需給約款で必ず確認してください。
まとめ|業態に合った削減策と補助金活用で利益体質へ
飲食店の電気代削減について、ポイントを整理します。
1. 業態別の電気代を示した公的統計はない。床面積1㎡あたり年間500〜800kWhを目安に、自店の床面積から概算する
2. 居酒屋店舗の実測例では厨房機器・その他42%・照明30%・空調23%・換気5%。厨房まわりと照明で7割を超える
3. 運用改善(コストゼロ)→料金プラン・電力会社の見直し→LED化→業務用機器の更新の順で段階的に進める
4. 空調の設定温度1度の緩和とフィルター清掃は、環境省が消費電力の削減幅を示している施策
5. 中小企業省力化投資補助金は人手不足対策の制度だが、厨房機器の更新にも活用できる。省エネ設備の更新には省エネ・非化石転換補助金がある
6. 再エネ電力プラン・脱炭素経営はZ世代・インバウンド客への訴求材料にもなる飲食店の電気代は、業態・規模・営業スタイルによって大きく異なります。共通して言えるのは、運用改善と契約の見直しと設備更新を組み合わせることで削減を進めることができるという点です。
本記事を参考に、自店の業態に合った施策を段階的に実行し、利益体質への改善を実現してください。補助金も活用しながら、長期的に持続可能な店舗経営を目指していきましょう。
電力契約を見直すときは、料金単価だけでなく燃料費調整額・市場価格・契約条件まで含めて比較することが重要です。同じ使用量でも、契約の内容次第で請求額は変わります。
デジタルグリッドでは、企業ごとの電力使用状況に合わせて電気料金の見直しや電力調達を支援しています。契約内容に不安がある方、請求書の見方がわからない方も、お気軽にご相談ください。
この記事の著者

デジタルグリッド編集部
日本初の民間企業による電力取引市場「Digital Grid Platform」の運営
デジタルグリッドのメンバーが執筆・監修しています。電力に関する基礎知識や再エネに関するコンテンツをみなさまにお届けしています。ご不明点などがあればお気軽にご相談ください。