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ホテル・旅館の電気代を削減する方法とは?電力契約の見直し・省エネ対策を解説
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ホテル・旅館の電気代を削減する方法とは?電力契約の見直し・省エネ対策を解説

電力知識

「宿泊の稼働率が上がっても利益が思ったほど伸びない」「光熱費が利益を圧迫している」——電気料金の上昇や燃料価格の変動は、ホテル・旅館の経営に影響を与える要因の一つです。

ホテル・旅館の電気代を削減するには、空調や給湯設備の運用改善によってエネルギー使用量を減らすだけでなく、現在の電力契約や料金プランが施設の使用状況に合っているかを確認することも重要です。電力契約の見直しによって、設備投資を伴わずにコストを削減できる可能性もあります。

この記事では、ホテル・旅館のエネルギー消費の特徴や業態別の課題を整理し、電力契約の見直し、運用改善、設備更新、PPAの活用まで、電気代削減に向けた具体的な方法を解説します。

この記事でわかること

  • ホテル・旅館の電気代は、年間どれくらいかかるのか?
  • 電力契約の見直しで、どこまで下げることができるのか?
  • 運用改善と設備投資、どこから手をつけるべきか

ホテル・旅館の電気代はどれくらい?

ホテル・旅館の電気代は、施設の規模や業態、設備構成、客室稼働率などによって大きく異なります。そのため、一律の相場を示すことは難しいものの、延床面積と電力使用量の参考値から、おおよその金額を試算することはできます。

延床面積から年間の電気代を概算する

環境省の「脱炭素先行地域づくり自治体向け 算定支援ファイル ガイドブック」では、ホテル・旅館の延床面積あたりの電力消費量の参考値として371kWh/㎡が示されています。

本記事では、この数値を年間電力使用量の試算に用い、電気料金を、基本料金なども含めて仮に25円/kWhとした場合の年間電気代を、延床面積別に紹介します。

延床面積

年間電力使用量

年間電気代(25円/kWh)

1,000㎡

約37万kWh

約928万円

3,000㎡

約111万kWh

約2,783万円

5,000㎡

約186万kWh

約4,638万円

10,000㎡

約371万kWh

約9,275万円

実際の電気代は、施設の規模や設備構成、客室稼働率、契約電力、料金プランなどによって異なります。自施設の電気代を確認する際は、過去12か月の電気料金と使用量を確認することが大切です。

光熱費が経費に占める割合

総務省・経済産業省の経済構造実態調査によると、宿泊業の水道光熱費は経費全体の5.8%とされています(2025年調査・2024年実績)。

この水道光熱費には、電気のほかに上下水道やガス・重油などの燃料も含まれます。

水道光熱費のうち電気がどれくらいを占めるかは、熱源の構成によって変わります。給湯や厨房にガス・重油を使っている施設ほど燃料費の比率が高くなり、電化が進んだ施設ほど電気代の比率が高くなります。

参考:環境省「脱炭素先行地域づくり自治体向け 算定支援ファイル ガイドブック<ver.1.0>(令和4年1月)」/総務省・経済産業省「2025年経済構造実態調査(産業横断調査)二次集計 事業区分(中分類、一部小分類)別費用内訳割合」
※371kWh/㎡は、自治体がCO₂削減効果を概算するための参考値です。実態調査の平均値ではなく、施設の規模・設備構成・稼働率によって実際の値は大きく変わります。
※「経費全体」は売上原価と販売費・一般管理費を合わせた費用総額です。売上高に対する比率ではありません。
※25円/kWhは試算上の仮定単価です。基本料金や各種調整額などを含めた年間の請求総額を年間電力使用量で割った金額を想定しており、ホテル・旅館の平均的な契約単価を示すものではありません。

最終的な判断材料は、統計ではなく自施設の実績値です。進め方は後述の「ホテル・旅館の電気代削減を成功させる4ステップ」で整理します。

ホテルのロビーラウンジ(照明・空調がエネルギー消費に占める割合)

ホテル・旅館のエネルギー消費の内訳

電気代を効果的に削減するには、電気を含めたエネルギー全体がどこに使われているかを把握することが出発点になります。ホテル・旅館の消費構造は、他の業種と比べて特徴的です。

給湯の比重が大きい

ホテル・旅館では、給湯に使うエネルギーの比重が大きくなります。客室シャワー・大浴場・厨房給湯・プールなど、複数の用途で大量の温水が必要になります。

温泉旅館や大浴場を備えたリゾートホテルでは、給湯の比率がさらに高くなる傾向があります。給湯設備の効率化は、これらの施設にとって削減余地の大きい領域です。

なお、給湯には都市ガス・重油・灯油が使われることも多く、その分は電気代ではなく燃料費として計上されます。電気代だけを見ていると、エネルギーコスト全体の構造を見誤ることがあります。

空調が電力消費の約3割を占める

客室・ロビー・廊下などの24時間稼働に加え、夏冬のピーク期には空調が大きな電力負荷となります。

資源エネルギー庁の省エネメニューによると、ホテル・旅館の夏季の電力消費は夕方にピークを迎え、17時頃では空調が約29%・照明が約18%を占めるとされています。合わせて約47%で、夏季の電気代抑制には空調対策の優先度が高くなります。

参考:資源エネルギー庁「夏季の省エネメニュー(事業者の皆様)」(北海道・沖縄を除く8エリア版)

業態別に異なる消費構造

ホテル・旅館の業態によって、エネルギー消費の構造は大きく異なります。同じ削減施策でも、効果の出方は業態によって変わります。

・ビジネスホテル
客室部分での消費が中心。パブリック部分の比率は小さく、客室単位の制御が効きやすい。

・シティホテル(総合ホテル)
客室に加え、宴会場・飲食店・ロビー等のパブリック部分の照明・空調消費が大きくなる傾向。
演出照明や業務用厨房など、消費電力の大きい設備が多い。

・リゾートホテル・温泉旅館
大浴場・プールの給湯用消費が突出して大きくなりやすい。
寒冷地立地では暖房需要も加わり、燃料価格の影響を強く受ける。

自施設の業態を踏まえて、効果の大きい順に施策を選ぶことが重要です。

ホテル・旅館特有の電気代問題

ホテル・旅館は、サービス品質を維持しながら電気代を削減することが大切です。

止めることのできない24時間稼働設備

ホテル・旅館は24時間365日稼働することが多く、止めることのできない設備が多数あります。客室冷蔵庫、ロビー照明、フロント機器、エレベーター、共用部の空調などです。

これらの設備は宿泊客の有無に関わらず常時稼働するため、客室稼働率が低い時期でも電気代が大きく下がらない構造になっています。固定費に近い性格のコストとして残り続けます。

サービス品質と省エネのジレンマ

ホテル・旅館の最重要事項は顧客満足度の維持です。冷暖房を過度に絞ったり、ロビーの照明を暗くしたりすると、ゲスト体験を損なってしまいます。

高級志向のシティホテルやリゾートホテルでは、空間の演出も含めて宿泊体験そのものを提供しているため、削減施策は「サービス品質を落とさない範囲で」という制約条件のもとで検討する必要があります。

燃料費調整額による電気代の変動

電気料金は、契約する料金プランによって燃料価格や卸電力市場価格などの影響を受ける場合があります。

例えば、燃料費調整額が設定されているプランでは、LNG・石炭・原油などの燃料価格の変動が電気料金に反映されます。また、市場価格調整額が設定されているプランでは、卸電力市場価格の変動によって電気料金が変わる場合があります。

調整額の算定方法や上限の有無は契約条件によって異なるため、現在の料金プランを確認することが重要です。

【すぐできる】運用改善から始める電気代削減策

大きな設備投資の前に、運用の見直しだけで実現できる施策があります。スタッフ全員の意識を高め、機器の使い方を変えるところから始めます。

空調の運用改善

空調の運用改善は、投資を伴わない施策のなかでは効果が出やすい領域です。環境省の「CO2削減対策Navi」では、業務用空調について冷暖房の設定温度を1℃緩和することで、熱源設備で消費されるエネルギーを約10%削減できるとしています。

参考:環境省「CO2削減対策Navi 113161 空調設定温度の緩和」
※室温の緩和が2℃以上の場合、省エネ効果は一律15%として算定されています。

【取り組みの内容】
・設定温度の適正化:バックヤード・事務所から緩和を進める(目安は夏28℃・冬20℃)。
 客室・パブリック部はサービス品質を優先し、緩和幅を抑える。
・カーテン・ブラインドで日射を調整し、空調負荷を軽減する。
・エアコンフィルターを定期的に清掃する。

フィルター清掃の効果は、算定例では空調電力の約1.5〜3%です。家庭用エアコンで案内されている数値より小さいため、他の施策と組み合わせて進めるのが現実的です。

参考:環境省「CO2削減対策Navi 112111 フィルターの清掃」
※約1.5%は清掃頻度を年1回から年2回に変更した場合、約3%は室内機フィルター清掃と室外機コイル洗浄を合わせた場合の算定例です。

閑散期の客室集約

客室稼働率が低い時期には、客室フロアを集約する運用が効果的です。未使用フロアの空調・照明を防災・換気・防湿等に必要な設備を除いて停止することで、無駄な電力消費を抑えることができます。

観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2025年の客室稼働率はビジネスホテルが75.3%、旅館が38.2%で、業態によって水準も異なります。フロアごとの稼働状況を見える化して計画的に集約すると、サービス品質を落とさずに削減効果を得やすくなります。

参考:観光庁「宿泊旅行統計調査(2025年・年間値確定値)」
※2025年の客室稼働率は、ビジネスホテル75.3%、シティホテル74.1%、リゾートホテル56.9%、旅館38.2%です。

給湯設備の運用改善

給湯の比率が大きいホテル・旅館では、給湯設備の運用改善が大きな効果につながる場合があります。

・従業員エリアの節水・温度管理
・浴槽清掃時の湯の使用量の見直し(熱湯を使わない洗浄方法への切り替えなど)
・客室シャワーの節水アダプター設置
・可能な範囲での宿泊客への節水協力の呼びかけ
ホテルの大浴場(給湯がエネルギー消費の31%を占める)

照明運用とパブリックスペースの管理

照明の運用改善も、日々のオペレーションのなかで進めることができます。宴会場の演出照明は使用時のみ点灯、バックヤードは間引き運用、客室清掃時の照明管理など、細かい積み重ねが効果を生みます。

バックヤードや事務所など、スタッフだけが使う場所は消灯のルールを決めておくと、担当者が変わっても運用が続きます。ただし、短い間隔で点けたり消したりを繰り返す場合は器具によって効果が変わるため、対象の場所と時間帯を決めて運用してください。

電力会社・料金プランの見直しで電気代を削減する

運用改善と並行して進めることができるのが、電力会社の見直しです。設備投資が要らないため、設備更新より先に着手することができます。同じ使用量でも、契約する小売電気事業者やプランによって電気代は変わります。

切り替えで変わるもの、変わらないもの

契約先を変更しても、送配電網はこれまでと同じものを使用します。電力品質や供給の安定性に影響はなく、停電のリスクが高まることもありません。変わるのは料金体系と契約条件です。

削減額は施設の使用パターンと現在の契約内容によって大きく異なります。負荷が特定の曜日・時間帯に集中している施設ほど、料金プランの選び方で差が出やすくなります。

切り替え時の4つのチェックポイント

電力会社を切り替える際は、料金単価の安さだけでなく、次の4点を確認してください。

1. 燃料費調整額の決まり方
   燃料価格に応じて毎月の単価が動きます。どの指標に連動し、上限が設定されているかを確認します。

2. 契約電力の最適化
   実際の使用パターンに対して契約電力が過大になっていないかを確認します。

3. 季節別単価・時間帯別単価
   夏冬ピークの単価とオフピーク単価のバランスが、自施設の負荷カーブに合っているかを確認します。

4. 契約期間と解約条件
   契約期間の長さと、中途解約時の精算金の有無を確認します。

複数社から見積もりを取り、単価だけでなく契約条件まで含めて比較することが大切です。料金の決まり方や契約内容の確認ポイントは、電気料金見直しガイドにもまとめています。

電気料金プランの種類と特徴

電気料金の決まり方は、契約する電力会社や料金プランによって異なります。大手電力会社で採用されている燃料費調整額を用いたプランのほか、市場連動型や固定型、両者を組み合わせたハイブリッド型などがあります。

電力会社を比較する際は、基本料金や電力量料金の単価だけでなく、燃料費調整額・市場価格調整額の算定方法や、価格変動リスクへの対応も含めて確認することが重要です。

燃料費調整型:燃料価格の変動などを電気料金に反映する仕組みです。電力量料金の基準単価が決まっていても、燃料費調整額によって毎月の電気代が変動します。

市場連動型:卸電力市場の価格に応じて電気料金が変動するプランです。市場価格が下落した際には電気代を抑えられる可能性がある一方、上昇時には電気代が増加する可能性があります。

固定型:一定期間の調達単価を固定することで、電力調達コストの見通しを立てやすくする方法です。一方、市場価格が下落した場合、そのメリットを受けにくい特徴があります。

ハイブリッド型:固定型と市場連動型を組み合わせた調達方法です。使用電力量の一部を固定価格で調達することで価格変動の影響を抑えつつ、残りの部分では市場価格の変動を反映できます。

事例:温泉旅館「大谷山荘」が電力調達の見直しで年間約2,490万円を削減

山口県長門市の老舗温泉旅館「大谷山荘」では、宿泊客の快適さを維持しながら電気代を削減することが課題となっていました。従来の電力契約では料金の内訳がわかりづらく、電力の調達単価を見直す余地も限られていました。

そこで導入したのが、デジタルグリッドプラットフォーム(DGP)です。電気料金の内訳を明確にするとともに、施設の電力使用状況に合わせて調達方法を見直した結果、導入から1年間で約2,490万円の電気代削減を実現しました。

大谷山荘の導入事例(固定と市場連動の組み合わせによる電気代削減)

具体的には、使用電力量の約48%を固定価格で調達し、残りの約52%を市場価格に連動させる方法を採用。市場価格が下落した際のメリットを活かしながら、価格上昇時の影響を固定価格部分で抑えることで、コスト削減と価格変動リスクへの備えを両立しています。

さらに、大谷山荘では電力市場の動向を踏まえ、2026年度分の一部電力を先行して固定価格で調達するなど、継続的なコスト管理と価格変動リスクへの対応を進めています。

デジタルグリッドでは、市場動向に関する情報提供や調達方法の提案など、契約後も継続的な支援を行っています。

▶ 大谷山荘の導入事例を詳しく見る

【中期投資】設備更新による電気代削減

運用の見直しと契約の見直しを終えたら、次のステップは設備更新です。初期費用は必要ですが、長期的な削減効果が期待できます。

LED照明への切り替え

LED照明への切り替えは、効果を見積もりやすい施策です。資源エネルギー庁の省エネポータルサイトでは、蛍光灯器具からLED照明器具への交換で約50%、白熱電球から電球形LEDランプへの交換で約83%の削減という比較が示されています。

寿命も長くなります。定格寿命はLEDランプが40,000時間で、蛍光ランプ(6,000時間)の約6.7倍、白熱電球(1,000時間)の約40倍です。ランプ交換の手間と人件費も減らすことができます。

参考:資源エネルギー庁「省エネポータルサイト 照明」/「省エネ性能カタログ 電球ガイド(2024年版)」
※削減率の比較条件は、蛍光灯器具68W→LED照明器具34W、白熱電球54W→電球形LEDランプ9Wです。

ロビー・廊下・客室など24時間点灯エリアが多いホテル・旅館では、点灯時間が長いぶんLED化の効果が大きくなります。

高効率空調設備への更新

導入から年数が経った空調設備は、最新の高効率機器への更新で電力使用量を減らすことができます。環境省の「CO2削減対策Navi」には、低効率のパッケージ空調16台を高効率機器に更新して電力使用量を約50%削減した算定例が掲載されています。効果の幅は更新前の機器の性能によって大きく変わります。現在使用している空調設備の省エネ性能や稼働時間を確認し、更新によってどの程度の電力使用量を削減できるか試算することが大切です。

参考:環境省「CO2削減対策Navi 111351 高効率パッケージエアコンの導入」
※算定例の条件は、COP冷房1.77・暖房2.05の機器から冷房3.55・暖房4.10の機器への更新です。

CO₂冷媒ヒートポンプ給湯器

給湯需要の大きい温泉旅館・リゾートホテルでは、CO₂冷媒ヒートポンプ給湯器の導入効果が期待できます。大気中の熱を利用するヒートポンプ技術により、燃焼式の給湯設備より少ないエネルギーで同じ量の温水をつくることができます。

ガスや重油を使用する設備から切り替える場合は、電力使用量が増える一方、燃料使用量を減らせるため、電気代だけでなく燃料費を含めた光熱費全体で比較することが重要です。

環境省のGHG算定ガイドラインでは、都市ガスの温水ボイラーから自然冷媒ヒートポンプ給湯器に更新した場合、エネルギー消費量が51%、エネルギーコストが54%削減されるとしています。

参考:環境省「GHG算定ガイドライン別添 高効率ヒートポンプ給湯機の導入」
※算定条件は、熱効率80%の都市ガス給湯用温水ボイラーからCOP3.9〜4の機器への更新、給湯負荷1t/㎡・年、延べ床面積2,000㎡、給湯温度70℃です。

全熱交換器・断熱性能の向上

全熱交換器は、外気と排気の間で熱と湿気の交換を行う設備です。空調負荷を軽減でき、宴会場・レストラン・ロビーなどで効果が出やすくなります。

また、建物の断熱性能を高めることも、空調負荷を根本的に減らす有効な手段です。断熱材・複層ガラス・熱線吸収反射ガラス・日射調整フィルムなどを大規模改修のタイミングで組み込むと、長期的な省エネ効果を得ることができます。

自家消費型太陽光発電とオンサイトPPAの導入

電力会社から購入する電気を減らす方法として、自家消費型太陽光発電と蓄電池の組み合わせがあります。屋根面積の広い大型ホテルやリゾート施設では、検討する価値があります。

建物の屋上に設置された太陽光パネル(自家消費型太陽光発電とPPAモデル)

自家消費型太陽光発電の仕組み

自家消費型太陽光発電とは、ホテル・旅館の屋根や敷地に太陽光パネルを設置し、発電した電気を自施設で消費する仕組みです。電力会社から購入する電気を減らすことで、電気代の削減につながります。

ホテル・旅館では、屋上や駐車場などに設置スペースを確保できる場合、自家消費型太陽光発電の導入を検討できます。ただし、実際の設置可否は屋根の形状や耐荷重、日照条件などによって異なります。

また、駐車場にソーラーカーポートを設置することで、発電と日よけを両立する方法もあります。

初期設備投資を抑えられるオンサイトPPA

自家消費型太陽光発電を導入する際の選択肢のひとつが、オンサイトPPA(Power Purchase Agreement)モデルです。

オンサイトPPAでは、太陽光発電設備の設置・運用を第三者であるPPA事業者が行います。ホテル側は屋根・敷地のスペースを提供し、発電した電気を電気料金として支払う形になります。

【オンサイトPPAの主な特徴】
・設備の初期費用は原則としてPPA事業者が負担するため、自社の初期投資を抑えることができる。
・メンテナンスはPPA事業者が担当する。
・契約期間中の電気料金単価は、契約で定めた条件で決まる。固定とする契約が一般的。
・契約期間は15〜20年程度が一般的。
・契約期間終了後の設備の扱い(譲渡・撤去・再契約)は契約内容によって異なる。

設備投資の余力が限られる施設でも検討しやすい一方、長期にわたって屋根と契約が拘束されます。条件は締結前に必ず確認してください。

蓄電池との組み合わせでピークカットを狙う

太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで、平常時に電力会社から購入する電気の削減に加え、電力使用のピークを抑えることもできます。

電力需要が高まる時間帯に蓄電池から電力を供給することで、最大需要電力(デマンド値)を抑制できます。契約電力の決定方法によっては、基本料金の削減につながる場合もあります。

また、停電時の自立運転に対応し、必要な設備への給電が可能な構成であれば、災害時の非常用電源としても活用でき、宿泊客の安全確保にもつながります。

ホテル・旅館の電気代削減を成功させる4ステップ

数多くの施策のなかから、何をどの順序で実行すべきでしょうか。実効性のあるアプローチを4ステップで整理します。

STEP1:現状把握(電気使用量の見える化)

最初のステップは、自施設の電気料金と電力使用状況を把握することです。まずは過去12か月分の請求書や検針票を確認し、電力使用量・契約電力・料金単価・季節ごとの変動を整理しましょう。

より詳細な分析が必要な場合は、30分単位の電力使用データなどを活用することで、時間帯ごとの電力使用状況を把握できます。

STEP2:施策の優先順位設定

現状把握ができたら、電力契約の見直しや運用改善など、設備投資を伴わずに取り組める施策から検討します。そのうえで、設備更新や太陽光発電の導入など、初期投資が必要な施策については、削減効果や投資回収期間を比較して優先順位を決めましょう。

STEP3:段階的に実行

優先順位に従って、段階的に施策を実行します。一般的には次の順序が効率的です。

1. 電力契約の見直し・運用改善:料金プランの比較、空調設定や照明運用の最適化など、設備投資を伴わずに検討できる施策から着手する。

2. 設備更新:LED照明、高効率空調、ヒートポンプ給湯器などの導入を検討する。

3. 自家消費型太陽光発電・蓄電池の導入:施設の設備条件や電力使用状況を踏まえて導入を検討する。

STEP4:効果検証と継続的改善

施策実行後は、月次・年次で効果を検証し、必要に応じて改善を加えていきます。電気代の数値だけでなく、デマンド値・客室稼働率との関連・季節変動なども合わせて分析することが重要です。

検証結果をもとに次年度の削減目標を設定し、改善のサイクルを回していきます。

サステナブル経営とインバウンド集客

電気代削減を単なるコスト削減ではなく、サステナブル経営の一環として捉えると、別の視点が見えてきます。

インバウンド客のサステナブル意識

訪日外国人旅行者、特に欧米豪からの旅行者は、宿泊施設選びにおいてサステナビリティを重視する傾向があります。再生可能エネルギーの導入、CO₂排出量の削減、環境に配慮した運営方針は、こうした旅行者への訴求材料になります。

電気代削減の取り組みは、サステナビリティへの対応としても発信することができます。並行して取り組みを伝えることで、集客の面でもプラスに働く可能性があります。

サステナブル認証の取得

国際的なサステナブル認証を取得するホテルも増えています。観光庁が取りまとめたラベルインデックスには、宿泊施設向けの認証としてグリーンキー、Green Globe Certification、EarthCheck Certified、GSTC certification、エコマーク(ホテル・旅館)、ISO21401などが収載されています。

参考:観光庁「持続可能な観光にかかる旅行商品の造成に向けたラベルインデックスのとりまとめ(2025年3月)」

これらの認証には、エネルギー使用量の管理・再エネ導入・廃棄物削減などの要件が含まれており、電気代削減の取り組みと重なる部分が多くあります。脱炭素の取り組みと事業成長を両立させる発想が、これからのホテル経営に求められる視点といえます。

ホテル・旅館の電気代に関するよくある質問

Q. 電力会社の見直しを相談するとき、何を用意すればよいですか?

直近12か月分の検針票または請求書があれば、使用量とデマンドの推移から試算することができます。あわせて、現在の契約電力・料金プラン名・契約期間と解約条件がわかる書類(供給条件説明書や需給約款)を手元に用意しておくと、比較の精度が上がります。

Q. 電力会社を切り替えると、停電しやすくなったり電気の品質が落ちたりしませんか?

送配電網は切り替えの前後で同じものを使用します。電力品質や供給の安定性は変わらず、停電のリスクが高まることもありません。変わるのは料金体系と契約条件です。

Q. 繁忙期と閑散期で使用量の差が大きいのですが、契約で見直せるところはありますか?

高圧で契約電力500kW未満の実量制が適用される場合、原則として当月を含む過去12か月間の最大需要電力(デマンド値)によって契約電力が決まります。そのため、繁忙期のピークを継続的に管理することが基本料金の見直しにつながる場合があります。また、季節別・時間帯別の料金設定が自施設の電力使用パターンに合っているかも確認しましょう。

Q. 客室の空調を自動制御するシステムは効果がありますか?

カードキー連動の客室空調・照明制御システムを導入することで、宿泊客が不在の間の電力消費を抑えることができます。客室在室率が稼働率を大きく下回る施設ほど、効果は大きくなります。日中の外出が多いビジネスホテルは、その典型です。

Q. オンサイトPPAで導入した太陽光設備は契約終了後どうなりますか?

契約期間終了後の設備の扱いは、契約内容によって異なります。ホテル側に無償譲渡される条件もあれば、再契約や撤去となる場合もあります。譲渡される場合は発電した電気を自社設備として使うことができますが、経年した設備の維持管理は自社の負担になります。契約締結時に、期間終了後の条件を必ず確認してください。

まとめ|ホテル・旅館の電気代削減は電力契約の見直しから

ホテル・旅館の電気代削減について、ポイントを整理します。

1. 電気代を下げる道筋は、電力契約の見直しと電力使用量の削減の2つ。 契約の見直しから着手し、運用改善・設備更新を順に重ねていくのが現実的。

2. 契約の見直しでは、料金単価だけでなく料金体系と契約条件まで比較する。 燃料費調整額の決まり方、契約電力、固定型と市場連動型の組み合わせ方等を確認。

3. 設備更新・太陽光発電・オンサイトPPAは中長期の選択肢。 初期費用と投資回収期間を踏まえ、契約の見直しや運用改善と組み合わせて検討。

デジタルグリッドでは、ホテル・旅館の電力使用状況に合わせた電力調達や電気料金の見直しを支援しています。電気料金の基本構造や契約内容の確認ポイントをまとめた資料を無料で公開していますので、まずは自社の契約を整理するところから始めたい方はご活用ください。

この記事の著者

デジタルグリッド編集部

デジタルグリッド編集部

日本初の民間企業による電力取引市場「Digital Grid Platform」の運営

デジタルグリッドのメンバーが執筆・監修しています。電力に関する基礎知識や再エネに関するコンテンツをみなさまにお届けしています。ご不明点などがあればお気軽にご相談ください。