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JEPXとは?日本卸電力取引所の仕組み・価格決定・電気料金への影響をわかりやすく解説
電力

JEPXとは?日本卸電力取引所の仕組み・価格決定・電気料金への影響をわかりやすく解説

電力知識

「電気料金プランの説明にJEPXという言葉が出てきたが、何の組織かわからない」「市場連動型プランの価格はどう決まっているのか」——電気料金の仕組みを理解したいときに必ず登場するのがJEPX(日本卸電力取引所)です。

この記事では、JEPXの基本から、主要6市場の役割、価格決定の仕組み、過去の高騰事例、電気料金プランへの影響までを整理します。

この記事でわかること

  • JEPX(日本卸電力取引所)とは?
  • 電気の値段が30分ごとに変わる仕組み
  • JEPXと電気料金プランの関係

JEPX(日本卸電力取引所)とは

JEPXとは「Japan Electric Power Exchange」の略称で、正式名称は「一般社団法人 日本卸電力取引所」です。日本で唯一の卸電力取引所として運営されています。

JEPXの基本情報と設立背景

JEPXは2003年11月に設立され、2005年4月から本格的に取引が始まりました。電力自由化の進展に合わせて、発電事業者や小売電気事業者が公正に電力を売買できる場として誕生したのです。

2000年以前は、東京電力や関西電力などの「一般電気事業者」が、発電から送配電・小売までを一手に担っていました。2000年3月の特別高圧分野の部分自由化を皮切りに自由化が段階的に進みましたが、新規参入した事業者の多くは自社で発電設備を持ちません。そのため、電力を安定的に調達できる場が必要になりました。

その後も制度改革は続き、2016年4月に小売が全面自由化され、2020年4月には大手電力の送配電部門が法的に分離されました。発電・送配電・小売の各部門が分かれたことで、卸電力を売買するJEPXの役割はさらに大きくなりました。

JEPXの取引会員には、発電事業者や小売電気事業者が名を連ねています。公式サイトの取引会員一覧では、2026年時点で電力取引の会員が370社を超えており、これに特別取引会員9社(沖縄を除く各エリアの一般送配電事業者)を加えた体制で、日本の電力市場の価格形成を担っています。

参考:一般社団法人 日本卸電力取引所「取引会員情報」

JEPXが果たす3つの役割

JEPXが日本の電力市場で果たしている役割は、大きく3つに整理できます。

1. 電力の調達手段の確保:自社発電所を持たない小売電気事業者にとって、JEPXは電力を仕入れる重要な手段になっています
2. 市場原理を通じた公正な価格指標の形成:取引価格がオープンになることで、卸電力市場全体の価格指標が形成されます
3. 需給ミスマッチを埋める場の提供:30分単位で売買できる仕組みにより、事業者は発電計画と需要計画のずれを実需給の直前まで調整することができます

これらの役割により、JEPXは日本の電力自由化を支える基盤的な存在となっています。

JEPXで運営される主な市場

JEPXは単一の市場ではなく、目的の異なる複数の取引市場を運営しています。ここでは中心となる6つの市場について、役割と特徴を整理します。

市場名

対象

約定方式

スポット市場(一日前市場)

翌日の電力

ブラインド・シングルプライスオークション方式

時間前市場(当日市場)

実需給1時間前までの電力

ザラ場方式

先渡市場

1週間〜3年先の電力

ザラ場方式

ベースロード市場

ベースロード電源の電力

シングルプライスオークション方式

非化石価値取引市場

CO2を排出しない電気の環境価値

マルチプライスオークション方式(FIT証書)/シングルプライスオークション方式(非FIT証書)

間接送電権市場

エリア間の価格差

シングルプライスオークション方式

参考:一般社団法人 日本卸電力取引所「取引の概要」

新興住宅街と送電線(JEPX・卸電力取引市場の仕組み)

スポット市場(一日前市場)

スポット市場は、翌日に受け渡しする電力を取引する市場で、JEPXのメイン市場です。1日を30分単位に区切った48コマの商品として取引が行われます。

最低取引単位は0.1MW、30分あたりの電力量に換算すると1コマ50kWhです。入札価格は、1kWhあたりの金額を0.01円(1銭)単位で指定します。発電事業者と小売電気事業者が売り入札・買い入札を行い、その結果として約定価格が決定する仕組みです。

スポット市場はJEPXの中で最も取引量が多く、市場価格の指標としても重視されています。

参考:一般社団法人 日本卸電力取引所「取引ガイド」

時間前市場(当日市場)

時間前市場は、スポット市場の取引後に発生する需給のミスマッチを調整するための市場です。実需給の1時間前まで取引が可能で、当日の急な発電設備トラブルや需要変動に対応します。

約定方式はザラ場方式(後述)が採用されており、売り入札と買い入札の条件が合致した時点で取引が成立します。

先渡市場

先渡市場は、将来の一定期間に受け渡しされる電力を取引する市場です。年間商品・月間商品・週間商品があり、年間商品では受渡開始日の最大3年前から取引が可能になります。

先渡市場の主な目的は、将来の電力価格を先に固定することで、市場価格変動のリスクをヘッジすることです。スポット市場価格の変動に強い影響を受ける小売電気事業者にとって、重要なリスク管理ツールとなっています。

ベースロード市場

ベースロード市場は、石炭火力・原子力・一般水力・地熱など、一般的に低コストで安定的に稼働できるとされる「ベースロード電源」の電力を取引する市場です。2019年7月に開設されました。

従来、これらの電源の多くを大手電力が保有していたため、新電力が価格面で不利な状況に置かれていました。この公平性の課題を解消するため、大手電力や電源開発(J-POWER)が自社のベースロード電源の一定量を供出する仕組みが整えられたのです。

取引機会は原則として年4回設定され、翌年度1年間のベースロード電源を確保できます。実施時期は年度ごとに公表されています。

参考:一般社団法人 日本卸電力取引所「2026年度ベースロード市場取引スケジュール」

非化石価値取引市場

非化石価値取引市場は、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなど、CO2を排出しない方法で発電された電気の「環境価値」を証書として売買する市場です。2018年5月に開設されました。

現在は、FIT電源由来の証書を扱う「再エネ価値取引市場」と、非FIT電源由来の証書を扱う「高度化法義務達成市場」に分かれて運営されています。企業の脱炭素経営との関わりは、記事の後半であらためて取り上げます。

約定方式は証書の種類によって異なります。FIT非化石証書は買い入札価格がそのまま約定価格になるマルチプライスオークション方式、非FIT非化石証書は約定した全員が同じ価格で取引するシングルプライスオークション方式が採用されています。

参考:一般社団法人 日本卸電力取引所「非化石価値取引規程」

間接送電権市場

間接送電権市場は、送電線の混雑によりエリアごとに約定価格が異なる場合に、その価格差によるリスクをヘッジするために設けられた市場です。2019年4月に開設され、地域間連系線の利用に伴うエリア間価格差リスクを回避する役割を担っています。

JEPXの取引価格の決まり方

JEPXでは、売り手と買い手の条件が一致した時点で取引が成立し、そのとき決まる価格を「約定価格」と呼びます。約定価格の決め方は市場ごとに異なります。ここでは、スポット市場と時間前・先渡市場で使われている2つの方式を取り上げます。

ブラインド・シングルプライスオークション方式

ブラインド・シングルプライスオークション方式は、スポット市場で採用されている価格決定方式です。

発電事業者は「○円/kWh以上なら、○○kWh売る」、小売電気事業者は「○円/kWh以下なら、○○kWh買う」という入札情報を取引システムに入力します。入札時は他社の状況が見えない「ブラインド」状態でオークションが行われる点が特徴です。

締切後、すべての売り入札を低い価格順に並べた供給曲線と、すべての買い入札を高い価格順に並べた需要曲線の交点が約定価格として決定されます。

重要なのは、入札価格に関わらず、約定した参加者全員がこの約定価格(シングルプライス)で取引する点です。たとえば10円/kWhで売り入札を出していた場合でも、約定価格が15円/kWhであれば、15円/kWhで売ることになります。

ザラ場方式(時間前市場・先渡市場)

ザラ場方式は、時間前市場(当日市場)や先渡市場で採用されている価格決定方式です。

売り手と買い手の価格条件が合致すると取引が成立します。約定価格は、合致した売買入札のうち先に出されていた入札価格となります。

同時同量の原則とエリアプライス

JEPXが30分単位で取引を行う背景には、電気の特性に基づく「同時同量の原則」があります。電気は大量に貯蔵することが難しく、消費量(需要)と発電量(供給)を常に一致させる必要があるからです。

このバランスを保つ必要があるため、電力は30分単位で計量・精算される仕組みになっています。JEPXが1日を48コマに区切って取引しているのも、この30分という単位に合わせたものです。

また、スポット市場では9つのエリア(北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州)ごとに「エリアプライス」が算出されます。送電線の混雑により電力が自由に移動できない場合、エリアごとに価格が異なることになります。なお沖縄エリアは本州などとの連系線がないため、対象外です。

参考:一般社団法人 日本卸電力取引所「スポット市場取引結果」

JEPX市場価格に影響する3つの要因

JEPXの市場価格は、複数の要因により日々変動しています。

市場連動型プランを契約している企業にとっては、電気料金に影響する重要な要素です。

①燃料価格の変動

主要な要因の一つが、燃料価格の変動です。日本の電力は火力発電への依存度が高く、燃料となるLNG(液化天然ガス)・原油・石炭の輸入価格が直接電力コストに反映されます。

②電力需給バランス

電力の需要と供給のバランスも、価格に直接影響します。需要が逼迫すれば価格が上昇し、需給が緩めば価格は下落する仕組みです。

気候(猛暑・寒波)、時間帯(朝夕のピーク時)、災害による発電所の停止などが需給バランスに影響を与えます。たとえば、日中の晴天時には太陽光発電量が増えるため、スポット市場価格が0.01円/kWh付近の底値に張り付くことも珍しくありません。一方、朝夕のピーク時間帯は需要が集中し、価格が上がりやすい傾向にあります。

③為替の影響

日本は燃料の大部分を海外からの輸入に頼っているため、為替レートも市場価格に影響します。円安が進むと、同じ量の燃料を輸入するために必要な円ベースでのコストが増加し、電力市場価格を押し上げる要因となります。

2021年1月のJEPX価格高騰事例

JEPX市場価格が大きく変動した代表的な事例として、2021年1月の価格高騰があります。

2021年1月のJEPX価格高騰の記録

・2021年1月13日(水):1日平均価格 約154.6円/kWh(スポット市場の1日平均として過去最高)
・2021年1月15日(金)16:30〜17:00:システムプライス 251.0円/kWh(過去最高)
・2021年1月17日受渡し分から:インバランス料金等単価の上限を200円/kWhとする措置を適用

2020年秋には月平均5〜6円/kWh台だった市場価格は、1日平均で約154.6円/kWh、コマ単位の最高値では251.0円/kWhまで上昇しました。

電力・ガス取引監視等委員会の検証によると、直接的な原因は、売り切れ(買い入札量に対して売り入札量が足りない状態)が続く中で、買い入札価格が徐々に上昇したことにあります。

その背景として、LNGの燃料制約による発電機の出力低下と、寒波による需要の急増などが挙げられています。

参考:電力・ガス取引監視等委員会「2020年度冬期のスポット市場価格の高騰について」

日立LNG基地と気嵐(2021年1月のJEPX価格高騰・LNGの燃料制約)

JEPXと電気料金プランの関係

JEPXの市場価格が電気料金にどの程度影響するかは、契約している料金プランによって異なります。

ここでは代表的な料金体系として、市場連動型と固定型、それらを組み合わせる考え方について整理します。

市場連動型プラン

市場連動型プランは、JEPXの市場価格に連動して電気料金が変動する料金体系です。プランによっては、30分ごとのスポット市場価格を電力量料金に反映するものもあり、電気を使う時間帯によって料金が変わります。

市場価格が安いタイミング(日中の太陽光発電が多い時間帯など)に電気を使えば、安い料金で利用できる点がメリットです。一方、市場価格が高騰したときには電気代も連動して上昇するリスクがあります。

市場連動型プランを契約する際は、過去の市場価格の推移を確認し、電力使用時間帯と相性が良いか判断することが大切です。

固定型プラン

固定型プランは、基本料金や電力量料金の単価が契約期間中ある程度固定されているプランです。市場連動型に比べてJEPXスポット価格の日々の変動が料金へ直接反映されにくいため、電気料金の見通しを立てやすい傾向があります。

ただし、燃料費調整額や市場価格に連動する調整項が別途設けられている場合もあるため、契約内容を確認する必要があります。

市場連動型と固定型を組み合わせる「ハイブリッド調達」

市場連動型と固定型を組み合わせるという選択肢もあります。デジタルグリッドプラットフォーム(DGP)では、市場からの調達と発電家からの直接調達、再エネの比率を組み合わせて、自社に合った電力調達を設計することができます。

発電家から直接調達する部分を固定価格で契約することで、市場価格の変動による影響を抑えながら、市場価格が安いときの恩恵も受けることができます。

市場連動か固定かの二択ではなく、使用状況に応じて配分を決められる点が特徴です。

JEPXとカーボンニュートラルの関係

ここからは脱炭素の切り口でJEPXについて見ていきます。実はJEPXは、料金プランへの影響だけでなく、企業の脱炭素経営にも深く関わっています。特に重要な役割を果たしているのが、前半で触れた非化石価値取引市場です。

工場の屋根に設置された太陽光発電パネル(非化石価値取引市場・脱炭素経営)

非化石価値取引市場で実現する脱炭素経営

非化石証書は、電気そのものとは切り離して環境価値だけを取引できる仕組みです。企業は使用電力量に応じた非化石証書を、その電力のCO2排出量の削減に活用することができます。

RE100・Scope2削減への活用

RE100(事業活動で使用する電力を100%再エネに切り替えることを目指す国際イニシアチブ)やSBT(科学的根拠に基づく削減目標)に対応する企業にとって、非化石価値取引市場は重要な手段となっています。

2021年11月からは、再エネ価値取引市場を通じて、電力ユーザー(需要家)が直接FIT非化石証書を購入できる仕組みも整いました。これにより、中小企業や個人事業主でも環境価値の調達ができるようになりました。

脱炭素社会への移行が加速する中、JEPXの非化石価値取引市場は今後さらに重要性を増していくと考えられます。

【補足】2024年度から始まった容量拠出金

JEPXとは別の仕組みですが、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が運営する容量市場では、2024年度から容量拠出金の負担が始まりました。容量市場は、将来必要となる電力の供給力(kW)をあらかじめ確保するための仕組みで、小売電気事業者などが容量拠出金を支払います。

メインオークションは原則として実需給年度の4年前に実施されます。容量拠出金は小売電気事業者にとって電力調達に関わるコストの一つとなるため、料金プランに反映される場合があります。

参考:電力広域的運営推進機関「容量拠出金について」

JEPXと電力市場に関するよくある質問

Q. 個人でJEPXに参加することはできますか?

できません。JEPXに参加できるのは取引会員(発電事業者・小売電気事業者・一定の条件を満たす需要家など)のみで、電力事業者のための市場として位置づけられています。約定方式は証書の種類によって異なります。FIT非化石証書は買い入札価格がそのまま約定価格になるマルチプライスオークション方式、非FIT非化石証書は約定した全員が同じ価格で取引するシングルプライスオークション方式が採用されています。

Q. JEPXのスポット市場価格はいつ決まり、どこで確認できますか?

スポット市場の入札締切は毎日10時です。締切後に需要曲線と供給曲線の交点として約定価格が決まり、約定結果は同日中に公開されます。

株価のようにリアルタイムで変動を追うことはできませんが、確定した約定価格や入札量は、JEPX公式サイトの「スポット市場取引結果」ページで30分コマ単位・日単位・月単位・年度単位で確認することができます。エリア別の価格推移も見られるため、市場連動型プランを契約している方は定期的に確認しておくとよいでしょう。

Q. 容量市場とJEPXの違いは何ですか?

JEPXは「電力量(kWh)」を取引する市場で、翌日や当日に受け渡しする電力の売買が行われます。一方、容量市場(運営は電力広域的運営推進機関OCCTO)は「容量(kW)」つまり将来の発電能力を取引する市場で、4年先の電力供給力を確保することが目的です。両者は補完関係にあり、別々に運営されています。

Q. JEPXの市場価格が再び高騰する可能性はありますか?

可能性はあります。燃料価格の急騰、寒波や猛暑による需要の急増、大規模災害による発電所の停止など、複数の要因が重なれば市場価格は上昇します。ただしその後はインバランス料金単価の上限導入などの制度改正が進んでおり、極端な高騰には一定の抑制策が設けられています。

まとめ|JEPXを理解して賢く電気料金プランを選ぼう

JEPX(日本卸電力取引所)について、ポイントを整理します。

1. JEPXは2003年11月設立、2005年4月から取引開始の、日本で唯一の卸電力取引所
2. スポット市場・時間前市場・先渡市場・ベースロード市場・非化石価値取引市場・間接送電権市場の6市場が中心。それぞれ異なる役割を担う
3. 市場価格は主に燃料価格・需給バランス・為替の3要因で変動。2021年1月にはシステムプライスが251.0円/kWhを記録した
4. 非化石価値取引市場は、企業の脱炭素経営(RE100・SBT対応)における重要な手段となっている

JEPXの仕組みを理解することは、自社に合った電力プランを選ぶ第一歩です。市場連動型プランを検討している方も、固定型プランを継続している方も、JEPXという市場が日本の電力価格形成を担っているという事実を知っておくと、電気料金に関するさまざまな判断がしやすくなります。

法人の電力契約を見直す際は、料金単価だけを比べても実際の負担額はわかりません。燃料費調整額や市場価格の動き、契約期間や解約条件まで含めて比較することが大切です。

デジタルグリッドでは、企業ごとの電力使用状況に合わせて、電気料金の見直しや電力調達のご提案を行っています。今の契約内容に不安がある方、請求書の見方がわからないという方も、お気軽にご相談ください。

この記事の著者

デジタルグリッド編集部

デジタルグリッド編集部

日本初の民間企業による電力取引市場「Digital Grid Platform」の運営

デジタルグリッドのメンバーが執筆・監修しています。電力に関する基礎知識や再エネに関するコンテンツをみなさまにお届けしています。ご不明点などがあればお気軽にご相談ください。