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新電力の倒産リスクとは?最新の撤退状況・原因・契約者がすべき対処法を解説
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新電力の倒産リスクとは?最新の撤退状況・原因・契約者がすべき対処法を解説

電力知識

「契約中の新電力が倒産したら、電気はどうなるのか」——2022年以降、新電力の撤退・倒産が相次ぎ、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。値上げや新規受付停止の通知を受け、今後の契約について悩んでいる方もいるかもしれません。

2025年1月末時点で登録されている小売電気事業者は747者。一方、電力小売の全面自由化以降、事業廃止・法人解散・登録取消に至った事業者は累計126件にのぼります。

この記事では、資源エネルギー庁などの公表データや実際の倒産・撤退事例をもとに、新電力の倒産リスクや、契約先が撤退・倒産した場合に電気がどうなるのか、利用者が取るべき対応について解説します。

この記事でわかること

  • なぜ新電力の撤退・倒産が起きるのか?
  • 契約先が倒産したとき、電気と手続きはどうなるのか?
  • 倒産リスクの低い新電力会社の選び方

新電力の倒産・撤退の最新状況

まずは新電力業界の現状を、客観的なデータで把握しましょう。

2025年1月末時点の登録は747者、廃止・解散などは累計126件

まずは小売電気事業者の数の推移です。資源エネルギー庁のデータによると、2025年1月末時点の登録小売電気事業者は747者です。1年前の2024年2月末は723者でしたので、24者増えています。参入自体は今も続いているということです。

一方で、市場からの退出も止まっていません。2016年の全面自由化以降に事業廃止・法人解散・登録取消に至った事業者は、なんと累計126件にのぼります。2024年2月末時点の106件から、1年足らずで20件増加しました。

なお、廃止や解散に至った事業者は登録から抹消されるため、この126件は現在の747者の内数ではありません。自由化から10年弱の間に、それだけの数の事業者が市場から退出したということです。

また、この登録数には「みなし小売電気事業者(大手電力の小売部門)」も含まれます。ですので、登録数の大半は新電力ですが、厳密には新電力だけの数ではありません。

数え方についても補足しておきます。資源エネルギー庁の資料では事業者数を「社」ではなく「者」と数えます。法人だけでなく個人事業者も登録できるためです。

より新しい2026年時点の資料では、登録数は約800者とされています。ただし撤退・廃止の件数まで揃った直近の集計が2025年1月末時点のため、本記事ではこの時点のデータを用いています。

参考:資源エネルギー庁

『電力小売全面自由化の進捗状況について(2026年7月7日)』

『電力小売全面自由化の進捗状況について(2025年2月28日)』

新電力数の推移:2021年以降は増加ペースが鈍化

新電力の登録事業者数も、年単位で大きな変化を見せています。以下のグラフは、2016〜2024年の登録事業者数の推移を各年4月時点でまとめたものです。

新電力(登録小売電気事業者)数の推移グラフ(2016〜2024年・各年4月時点)

2016年4月の全面自由化スタート時の291者から、2021年4月には716者まで急増しました。その後も増加は続き、2022年4月の743者がピークです。しかし燃料高騰の影響で撤退・倒産が相次ぎ、2023年4月は726者、2024年4月は727者と横ばいに転じています。

参考:資源エネルギー庁『電力小売全面自由化の進捗状況について(2025年2月28日)』
参考:資源エネルギー庁『令和6年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2025)』

撤退・倒産の累計は2年で約7倍に

帝国データバンクの調査によると、撤退・倒産した新電力の数は次のように推移しています。

時点

撤退・倒産件数(累計)

備考

2022年3月

17社

起点

2023年3月

83社

1年で約5倍

2024年3月

119社

2年前の約7倍

※ 2021年4月時点で登録されていた新電力706社を調査対象とした累計です。「事業撤退」と「倒産・廃業」の合計を指します。
※ 同じ調査には「契約停止」を含めた広義の集計(2023年3月時点で195社)もあります。
※ 帝国データバンクの調査は、原典の表記に合わせて「社」と数えています。

2022年3月時点で17社だった撤退・倒産件数が、2024年3月にはわずか2年で119社にまで急増しました。

ただし、これは累計値です。増加数で見ると2022年3月〜2023年3月が66社、2023年3月〜2024年3月が36社と、ペース自体は鈍化しています。

背景には、2020〜2021年冬の寒波による電力市場価格の急騰、2022年以降のロシアによるウクライナ侵攻、そして円安による燃料価格の高騰があります。

参考:帝国データバンク『「新電力会社」事業撤退動向調査(2024年3月)』

新電力の代表的な倒産・撤退・トラブル事例

数字だけではイメージが湧きにくいかもしれません。実際に発生した代表的な倒産・撤退事例を、背景データとともに紹介します。これらの事例から、倒産が「特殊な事象ではない」ことがわかります。

F-Power(エフパワー):新電力最大規模の経営破綻

F-Power(東京都港区)は、2021年3月24日に東京地裁へ会社更生法の適用を申請しました。負債総額は約464億円(債権者は約315名)。新電力としては過去最大規模の倒産事例です。

F-Powerは2018年4月に契約電力400万kWを超え、新電力最大手となるなど、業界トップクラスの規模を誇っていました。しかし自社では発電設備を持たず、グループ会社の発電所や日本卸電力取引所(JEPX)からの調達に依存するビジネスモデルでした。

2020年12月〜2021年1月の寒波による電力市場価格の急騰で調達コストが大幅に上昇し、インバランス料金(計画した調達量と実際の使用量のズレを精算する費用)の支払い負担が重なり経営が破綻したのです。

F-Powerの倒産は、自社電源を持たない新電力の構造的な脆弱性を象徴する事例として、業界に大きな衝撃を与えました。

参考:帝国データバンク『株式会社F-Power 倒産速報』

ホープエナジー:自治体向け電力で破綻、約5,000施設に影響

ホープエナジー(福岡市)は2022年3月25日、東京地裁へ破産を申請し同日、破産手続開始決定を受けました。負債総額は約300億円。自治体や公共施設向けの電力供給を中心に事業を拡大していた新電力で、契約していた自治体や公共施設は全国約5,000施設にのぼりました。

ホープエナジーは2020年12月〜2021年1月の電力価格高騰を受け、2021年1月分だけで約65億円の不足インバランス料金が発生しています。この分は分割払いで完済したものの、2021年10月以降のJEPX価格高騰で、仕入れ値が売値を上回る「逆ざや」状態が続きました。

2022年2月の平均電力市場調達単価実績は23.96円、平均販売単価実績は15.09円。1kWhあたり約9円の逆ざやで電力を販売していた計算になります。

最終的に託送料金を支払うことができなくなり、沖縄電力を除く一般送配電事業者9社から託送供給契約を解除されたことで事業継続が不可能となりました。公共分野にも影響が広がった事例として、新電力倒産リスクの深刻さを社会に印象付けました。

参考:東京商工リサーチ『新電力子会社「破産」でホープが失ったもの』

エルピオでんき:約14万件に影響した電力小売事業の停止

エルピオでんき(千葉県市川市)は2022年3月25日、電力小売事業の停止を発表しました。サービス停止は2022年4月30日。契約件数は約14万件で、4月中に他社への切り替えが必要となりました。

エルピオは1965年創業のLP(液化石油)ガス会社で、2016年4月に小売電気事業者として登録し、「エルピオでんき」というブランド名で電力小売事業を展開していました。割安な料金プランで急成長していましたが、卸電力市場の価格高騰により低価格を維持できなくなったことが事業停止の主な理由です。

なおエルピオは、その後に電力小売事業を再開しています。事業停止が、必ずしも恒久的な撤退を意味しない例といえます。

参考:ITmedia スマートジャパン『エルピオとウエストHDが電力小売から撤退』

ストエネ(旧グランデータ):高額請求問題で業務改善勧告

ストエネ(旧グランデータ)は、倒産ではないものの、消費者にとって大きな影響を与えた事例として知られています。2023年1月の利用分から「想定を大きく上回る高額な電気料金が請求された」という指摘が利用者から相次ぎ、SNSやメディアで大きく取り上げられました。

報道では、5人家族で2月の請求が13万円を超えたという利用者の投稿が伝えられました。背景には、燃料費調整額の算出方法の変更(2022年5月・12月)と、その変更内容の周知が不十分だった点があります。

2023年6月26日、電力・ガス取引監視等委員会から業務改善勧告を受けました。約23万件の契約変更通知が不十分だったこと、約34万件に法定書面を交付していなかったことなどが理由です。その後、社名をグランデータから株式会社ストエネへ変更しています(2023年11月1日)。

なおストエネは2024年12月6日にも、同委員会から2度目の業務改善勧告を受けています。新電力の倒産だけでなく、料金の透明性不足や説明不足によるトラブルも、利用者にとっては大きなリスクといえます。

参考:電力・ガス取引監視等委員会『株式会社グランデータに対する業務改善勧告を行いました』

参考:J-CASTニュース『新電力「グランデータ」、高額請求で苦情相次ぐ 月13万円超も…会社は燃料費調整を変更して謝罪』

並ぶビジネスパーソンのミニチュア人形(新電力の撤退・倒産が相次ぐ業界構造)

なぜ新電力は倒産するのか?4つの構造的理由

ここまで紹介した倒産・撤退事例には、共通する原因があります。新電力業界の構造的な弱さが、燃料高騰や市場価格の急騰時に一気に表面化したのです。4つの理由を整理します。

理由①:卸電力市場価格の急騰

最大の原因は、卸電力市場の価格急騰です。2020〜2021年冬の寒波と天然ガス在庫不足、2022年以降のウクライナ侵攻と円安による燃料価格高騰が、JEPX(日本卸電力取引所)の電力市場価格を押し上げました。

2020年度の年間平均システムプライスは11.20円/kWhでした。

ところが2021年1月には、月平均が63.07円/kWhに達しています。1日平均でも最高154.6円/kWh、30分のコマ単位では最高251.00円/kWhを記録しました。年間平均の5倍を超える月平均、20倍を超えるコマが発生したことになります。

なお2020年度の年間平均には、この高騰期そのものが含まれています。高騰前の水準と比べれば、開きはさらに大きくなります。

多くの新電力が想定していた前提が崩れ、調達コストが急増した結果、経営が立ち行かなくなったのです。

参考:電力・ガス取引監視等委員会『2020年度冬期のスポット市場価格の高騰について』

参考:日本卸電力取引所『2021年度事業報告書』

理由②:自社発電所を持たないビジネスモデル

多くの新電力は、自社で発電設備を持たず、JEPXや発電事業者からの調達で電力を仕入れる形でビジネスを展開してきました。電力市場が安定していた時期はこのモデルで十分な利益を出すことができましたが、市場価格が急騰するとダイレクトに影響を受けます。

F-Power・ホープエナジー・エルピオでんきといった事例はいずれも、自社電源を十分に持たず、市場調達に依存していました。安定供給は小売電気事業者の重要な責務です。それを支える調達先(電源ポートフォリオ)の確保が不十分だった新電力が、市場変動に飲み込まれていきました。

理由③:固定料金プランでの値上げ困難

新電力の多くは、消費者にわかりやすさを訴求するため、固定単価ベースの料金プランを採用していました。しかし契約上、すぐには値上げできず、仕入れ価格の上昇分を販売価格に転嫁できない期間が続いたケースが多くあります。

これにより、販売価格が仕入れ価格を下回る「逆ざや」状態が発生しました。販売すればするほど赤字が拡大する構造に陥り、経営の悪化に直結したのです。前述のホープエナジーは、その典型例といえます。

理由④:資本力の弱い中小事業者の市場退出

大手企業のグループに属さない中小規模の新電力は、急激な市況変動を吸収するだけの資本力を持ちにくいのが実情です。短期的な赤字を耐え抜くだけの内部留保や、親会社からの資金支援が得られない事業者は、事業継続を断念せざるを得なくなりました。

加えて2024年度からは、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が運営する容量市場の容量拠出金の負担も始まりました。これは新たな固定コストとして、特に資本力の弱い新電力の経営をさらに圧迫する要因になっています。中小新電力にとって、業界の構造変化はまだ続いているのです。

参考:電力広域的運営推進機関『容量拠出金について』

新電力が倒産しても、すぐに電気が止まらない仕組み

ここまで読んで「契約先が倒産したら電気が止まるのでは」と不安に感じた方もいるかもしれません。結論からいうと、通知を受けた翌日に電気が止まるようなことはありません。

ただし、そのまま放置すれば無契約状態になり、供給は止まります。仕組みと必要な手続きを順に確認します。

電力供給の3段階構造(発電・送配電・小売)

電気が家庭に届くまでには、3つの段階があります。

発電:発電事業者が電気を生み出す
送配電:一般送配電事業者(東京電力パワーグリッドなど10社)が送電線・配電線を通じて電気を運ぶ
小売:小売電気事業者が需要家との契約・料金請求を担う

新電力は3つ目の「小売」を担う事業者です。物理的に電気を運んでいるのは一般送配電事業者であり、小売電気事業者が倒産しても電気の供給自体は継続します。送配電網は、地域の電力インフラとして安定的に維持される仕組みです。

「電力の小売営業に関する指針」が定める2段階の通知ルール

経済産業省のガイドライン「電力の小売営業に関する指針」では、電力会社側の都合で供給が終わる場合の手続きが、2つのケースに分けて定められています。

【事業から撤退する場合】
休廃止日の60日前まで(高圧契約・特別高圧契約、および契約が1万件以上の事業は90日前まで)に、需要家へ周知する

【倒産などを理由に個別の契約を解除する場合】
解除日の15日程度前までに、解除日とその理由を明示した予告通知を行う
あわせて、無契約状態では電気の供給が止まること、最終保障供給の申込方法を説明する

このため、突然電気が止まることは原則ありません。特に事業からの撤退では、低圧契約でも2ヶ月前後の猶予が確保されます。この期間中に別の電力会社へ切り替えれば、電気の供給が途切れることはありません。

参考:経済産業省『電力の小売営業に関する指針』

最終保障供給制度(法人向け)と一般家庭の場合

電力会社の倒産時に重要な役割を果たすのが、最終保障供給制度です。一般送配電事業者が、いずれの小売電気事業者とも契約できない需要家に対して、暫定的に電気を供給する仕組みです。

ただし注意点があります。最終保障供給の対象は、高圧(50kW以上2,000kW未満)と特別高圧(2,000kW以上)の需要家です。一般家庭や小規模店舗などの低圧需要家(50kW未満)は対象になりません。

では、一般家庭の場合はどうなるのでしょうか。低圧には、みなし小売電気事業者(東京電力エナジーパートナーなど、大手電力の小売部門)が規制料金で電気を供給する義務が課されています。契約していた新電力が撤退しても、電気を受け取る先がなくなることはありません。

ただし自動的に契約が切り替わるわけではなく、自分で申し込み手続きを行う必要があります。突然電気が止まることはありませんが、周知期間のうちに新たな契約先を選んでください。

参考:東京電力パワーグリッド『最終保障供給』

参考:電力・ガス取引監視等委員会『よくある質問(問30)』

最終保障供給の料金は割高になりやすい

最終保障供給の料金は、2022年9月に算定方法が改定されました。従来どおり、みなし小売電気事業者の標準的な料金メニューの1.2倍を基本としつつ、卸電力市場価格を反映した「市場価格調整額」を毎月加算・減算する仕組みが加わっています。

通常の電力小売契約と比べて割高になりやすく、長期間の利用には向きません。最終保障供給はあくまでも一時的な救済措置と捉え、速やかに新しい電力会社へ切り替えることが大切です。契約期間も原則1年以内とされています。

参考:関西電力送配電『最終保障供給約款に基づく料金』

契約中の新電力が倒産したらすべきこと

実際に契約中の電力会社から倒産・撤退の通知が届いたら、何をすべきでしょうか。個人向けと法人向けに分けて、具体的なアクションを整理します。

【個人向け】倒産通知を受けたときの3ステップ

一般家庭の場合は、次の3ステップで対応してください。

1. 通知内容の確認:サービス終了日・最終請求額・電力供給の終了時期・新しい契約先への切り替え案内など、すべての情報を把握する
2. 新しい電力会社の選定:複数社のプランを比較して、自分の使用パターンに合った契約先を決める。乗り換え先がすぐに決まらない場合は、いったん大手電力の規制料金プランへ申し込むことで電気の供給を確保できる
3. 速やかな切り替え手続き:供給停止日までに新しい電力会社への切り替えを完了させる。撤退の場合、低圧でも休廃止日の60日前までに周知されるため、この期間内に手続きを終える

一般家庭は最終保障供給の対象外なので、みなし小売電気事業者(大手電力の小売部門)の規制料金プランが実質的な受け皿になります。ただし自動では切り替わりません。できるだけ早めに、自分に合ったプランへ切り替えることをおすすめします。

参考:資源エネルギー庁『電力自由化について よくある質問』

【法人向け】倒産・撤退時の対応

法人契約の場合は、個人とは異なる対応が必要です。

・最終保障供給の活用:高圧・特別高圧契約であれば、一般送配電事業者の最終保障供給に申し込むことができる
・複数社からの相見積もり:継続的な事業活動のため、3社以上から見積もりを取って比較する
・デマンド値・使用量データの準備:高圧契約の場合、一般的に過去12ヶ月のデータが見積もりに必要
・切り替えスケジュールの管理:高圧の託送契約の切り替えは、スイッチング日の9営業日前までの申し込みが原則。ただし見積・審査・契約締結にも時間がかかるため、余裕を持った計画が必要

法人は事業継続性の観点から、いち早く適切な電力会社へ切り替えることが重要です。特に高圧契約は手続きに時間がかかるため、通知を受けた時点ですぐに動き出してください。

参考:資源エネルギー庁『電力会社を切り替えるには?』

切り替え時に必要な情報

いずれの場合も、切り替え手続きには次の情報が必要です。事前にまとめておくと、手続きがスムーズに進みます。

・供給地点特定番号(22桁の番号、検針票で確認できる)
・お客さま番号
・現在の契約プラン名と契約電力(または契約アンペア)
・過去12ヶ月の電気使用量・電気代(高圧の場合はデマンド値も)
・最終保障供給を利用する場合は一般送配電事業者の連絡先
電力契約の切り替え手続きで書類にサインする様子(新電力の倒産時の対応)

倒産リスクの低い新電力会社の5つの選び方

これから電力会社を選ぶ方、契約先を見直したい方のために、倒産リスクの低い新電力会社を選ぶための5つのポイントを整理します。料金の安さだけで判断せず、事業継続性も判断材料に加えてください。

①運営会社の資本背景と財務状況を確認

最初に確認すべきは、運営会社の資本背景と財務状況です。次のような会社は、相対的に安定性が高いと考えられます。

・大手企業の子会社・グループ会社(通信・ガス・石油・商社系など)
・上場企業(東証プライム・スタンダード・グロース市場)
・小売電気事業者としての登録が古く、複数年にわたって事業を継続している(2016年の全面自由化前後から継続していれば一つの目安)
・公式サイトで決算情報や経営状況を継続的に公開している

逆に、資本背景が不明確だったり、Webサイトに会社概要が薄かったり、設立から数年しか経っていないような新電力は、慎重な判断が必要です。

②自社発電所の保有状況を確認

自社で発電設備を持つ電力会社は、市場価格の変動に対する耐性が高い傾向にあります。

・太陽光や風力などの発電所を自社で運営している会社
・グループ会社で発電事業を展開している会社
・複数の発電事業者と長期的な相対契約を結んでいる会社

一方、すべての電力を市場(JEPX)から調達している新電力は、市場価格高騰時に経営が一気に悪化するリスクがあります。F-Power・ホープエナジーといった倒産事例は、まさにこのパターンでした。

③料金プランの透明性を確認

料金プランの設計が透明か、利用者にとってわかりやすいかどうかも、信頼性を測る指標になります。

・燃料費調整額の単価・上限が公式サイトに明示されているか
・「燃料費調整額は地域の大手電力と同単価」等と記載されているか
・市場連動型プランの場合、価格変動のリスクが十分に説明されているか
・料金プランの変更時に、利用者への十分な周知が行われているか

ストエネの事例のように、料金変更の周知が不十分だと利用者とのトラブルにつながります。プランの透明性が高い電力会社を選ぶことが、後々のトラブルを避けることにつながります。

④契約期間・違約金の妥当性

必要以上に長い契約期間や、高額な違約金が設定されている電力会社は要注意です。

・契約期間は何年か、長すぎないか確認する
・違約金の金額や条件が妥当か
・引っ越しなどやむを得ない事情での解約時に、違約金免除の規定があるか

一度契約したら抜けにくい仕組みになっている電力会社は、料金高騰時にも他社へ移ることができずに損をするリスクがあります。

⑤公式サイト・情報開示の充実度

情報開示の姿勢は、その電力会社の信頼性を判断する重要な手がかりです。

・プレスリリースが定期的に更新されているか
・IR情報(上場企業の場合)が公開されているか
・会社沿革・経営陣・本社所在地が明示されているか
・カスタマーサポートの問い合わせ窓口・営業時間が明確か

情報開示が薄い電力会社は、有事の対応もスムーズに進まない可能性があります。契約前に必ず公式サイトを丁寧に確認してください。

【GX視点】持続可能な電力会社を選ぶという観点

ここまでは倒産リスクを軸に見てきましたが、これからの時代は「持続可能な電力会社かどうか」という別の視点も重要になります。GX(グリーントランスフォーメーション)や脱炭素経営の流れの中で、電力会社の選び方にも新しい基準が加わってきています。

再エネ電源比率の高い電力会社

FIT(固定価格買取制度)電気や非FIT再エネ電気の比率が高い電力会社は、脱炭素社会への貢献という観点で評価できます。家庭でも法人でも、自社のCO2排出量を削減するために、再エネ比率の高い電力プランへの切り替えを検討する動きが広がっています。

再エネ電力プランの料金は、従来の電力プランと比べてやや高めになるケースもありますが、環境負荷低減と将来のリスク対応の両面で価値があります。料金とのバランスを見ながら判断してください。

CO2フリープランの提供

一部の電力会社は、CO2排出量を実質ゼロにする「CO2フリープラン」を提供しています。RE100(事業活動で使用する電力を100%再エネに切り替えることを目指す企業の取り組み)やSBT(科学的根拠に基づく削減目標)への対応を進める法人にとって、こうしたプランは重要な選択肢です。

脱炭素経営の重要性は今後さらに高まる見通しです。電力会社選びの際は、安定性と持続可能性の両方を考慮することで、長期的に最適な選択をすることができます。

新電力の倒産リスクに関するよくある質問

Q. 新電力が倒産したら、電気代の未払い分はどうなりますか?

基本的に、これまで使用した電力の料金は、倒産した電力会社(の破産管財人)から請求されます。電気を使った事実がある以上、料金は支払う義務があります。具体的な請求方法や期限は、倒産後に届く通知を確認してください。

Q. 大手電力会社(旧一般電気事業者)に倒産リスクはないのでしょうか?

大手電力会社は、発電所・送配電網などのインフラを保有し、地域の電力供給を支える役割を担っているため、倒産リスクは極めて低いとされています。ただし、燃料価格の高騰などで赤字に転落する事例はあります。完全にリスクがゼロというわけではありませんが、新電力と比べて経営基盤は格段に強固です。

Q. 倒産した電力会社から請求された解約金は支払う必要がありますか?

事業者側の都合による契約終了では、解約金が請求されないケースが一般的です。ただし取り扱いは各社の約款によります。倒産通知の記載内容と供給条件説明書を必ず確認してください。引っ越しなどやむを得ない理由での解約は免除される規定もあります。

Q. 自分の契約先の倒産情報を確認する方法は?

公式サイトの「重要なお知らせ」、メールでの通知、書面での郵送通知が主な情報源です。倒産・撤退が決まった場合、指針に基づいて電力会社から事前の周知が行われることになっています。

ただし、破産のように手続きが急に進むケースでは、通知が直前になることもあります。SNSやニュースサイトでも情報が出るため、契約中の電力会社の動向は定期的にチェックすることをおすすめします。

Q. 倒産リスクを完全に避ける方法はありますか?

完全にゼロにはできませんが、大手電力会社(旧一般電気事業者)と契約することで、倒産リスクを大幅に下げることができます。新電力を選ぶ場合は、本記事で紹介した5つの選び方(資本背景・自社電源・料金透明性・契約条件・情報開示)を確認することで、倒産リスクの低い電力会社を選ぶことができます。

まとめ|倒産リスクを理解した上で「賢く選ぶ」ことが大切

新電力の倒産リスクについて、ポイントを整理します。

1. 2025年1月末時点の登録小売電気事業者は747者。一方、自由化以降に事業廃止・法人解散・登録取消に至った事業者は累計126件にのぼる
2. 帝国データバンクの調査では、撤退・倒産した新電力の累計が2022年3月の17社から2024年3月には119社へ増えた。ただし年ごとの増加数は鈍化している
3. 代表的な倒産事例(F-Power・ホープエナジー・エルピオでんき)には、自社電源を持たないビジネスモデルという共通点がある
4. 倒産しても電気はすぐには止まらない。事業撤退時は休廃止日の60日前まで(高圧・特別高圧、および契約が1万件以上の事業は90日前まで)、倒産による個別の契約解除でも解除日の15日程度前までに通知が求められている
5. 一般家庭は最終保障供給の対象外。みなし小売電気事業者(大手電力の小売部門)の規制料金プランが受け皿になるが、自分で申し込み手続きをする必要がある
6. 倒産リスクを下げるには、資本背景・自社電源・料金透明性・契約条件・情報開示の5つを確認する

新電力業界は、燃料価格や市場価格の変動という外部要因に大きく影響を受ける構造を抱えています。すべての新電力にリスクがあるわけではありませんが、業界の構造を理解した上で電力会社を選ぶことが、これからの時代には欠かせません。

脱炭素経営やGX(グリーントランスフォーメーション)が進む中、電気の選び方も「安さ」だけでなく「持続可能性」「事業継続性」を含めた総合判断が求められています。本記事で紹介した観点を踏まえて、安心して長く付き合える電力会社を選んでください。

ここまで見てきた確認ポイントは、法人の電力契約でも基本的に同じです。

デジタルグリッドは東証グロース市場に上場し、財務・業績情報を継続的に開示しています。 また、市場連動型と固定価格を組み合わせるなど、調達方法を工夫することで価格変動リスクの分散も可能です。 料金だけでなく、経営基盤やリスクヘッジの考え方も、電力会社選びの重要なポイントです。 今の契約内容に不安がある方や、請求書の見方がわからないという方も、お気軽にご相談ください。

この記事の著者

デジタルグリッド編集部

デジタルグリッド編集部

日本初の民間企業による電力取引市場「Digital Grid Platform」の運営

デジタルグリッドのメンバーが執筆・監修しています。電力に関する基礎知識や再エネに関するコンテンツをみなさまにお届けしています。ご不明点などがあればお気軽にご相談ください。