工場の電気代が高い理由と削減方法8選|デマンド管理・太陽光・省エネ設備まで解説
工場の電気代が毎年上がり続け、経営を圧迫している。そう感じている製造業の担当者は少なくありません。しかし「生産ラインを止めるわけにはいかない」「何から手をつければいいかわからない」という状況で、対策が進まないケースも多いです。
工場の電気代には、家庭用やオフィス用とは根本的に異なる構造があります。この記事では、その構造を解説した上で、効果の大きい順に8つの削減方法を紹介します。
この記事でわかること
- なぜ工場の電気代は下がりにくいのか
- 工場の電気代削減の方法8つ
- 自社に合った、いちばん効果的な電気代削減の方法とは?
なぜ工場の電気代は高いのか
工場の電気代が高い背景には、3つの構造的な要因があります。それぞれを理解することが、的外れな対策を避け、効果的な削減へとつながります。
工場の電力消費の83%は生産設備が占める
経済産業省資源エネルギー庁が公表する「夏季の省エネメニュー(事業者の皆様)本州·四国・九州」によると、製造業の電力消費のうち生産設備が占める割合は約83%です。空調・照明などの一般設備はわずか17%にすぎません。
この数字が示すのは、「照明をLEDにする」「空調の設定温度を1℃変える」といった一般的な節電策だけでは、工場の電気代の削減には限界があるということです。消費電力の大半を占める生産設備にアプローチしなければ、大幅な削減は見込めません。
ただし、生産ラインを止めることは現実的ではありません。そのため、「設備を動かしながらいかに電力消費を抑えるか」「ピーク電力をいかにコントロールするか」という視点が重要です具体的な対策は後述する「③生産設備のインバータ化」のセクションで解説します。
出典:資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」
デマンド制度により30分のピークが1年間の基本料金を決める
電気の契約は、電圧の大きさによって大きく「低圧電力」「高圧電力」「特別高圧電力」の三つに分類されます。その中で、工場の多くは、契約電力が50kW以上2000kW未満の「高圧電力」に分類されます。
家庭用などの低圧電力では、同時に使える電力量で料金が決まる「アンペア制」で基本料金が決まりますが、高圧電力の基本料金は「デマンド制度」という仕組みで決まります。デマンド制度とは、30分間の平均電力(デマンド値)のうち過去12ヶ月で最も高かった値を「契約電力」とし、その値に単価を掛けて基本料金を算出する仕組みです。
【基本料金の計算式(高圧・実量制の場合)】
基本料金 = 契約電力(kW) × 基本料金単価(円/kW)
契約電力 = 当月を含む過去12ヶ月の最大デマンド値(kW)この仕組みの重要なポイントは、「たった一度のピーク電力が、その後12ヶ月間の基本料金を決める」という点です。繁忙期や夏場に複数の大型設備が同時に稼働してデマンド値が更新されると、その後11ヶ月間は高い基本料金が続きます。
逆に言えば、30分単位のピーク電力をコントロールするだけで、基本料金を継続的に下げることができます。後述する「①デマンド管理」は、このメカニズムを活用した最も即効性の高い施策です。
燃料費調整額と再エネ賦課金が使用量に比例して増加する
電気代の明細には「電力量料金」のほかに、「燃料費調整額」と「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」が加算されています。この2つは使用量(kWh)に比例して増える費用で、電力をたくさん使う工場ほど負担が大きくなります。
燃料費調整額は、石炭・LNG・原油などの輸入燃料価格の変動を月々の電気料金に自動的に反映させる仕組みです。2022年以降の燃料高騰と円安の影響で、この費用が急増した工場が多くあります。電力会社によっては燃料費調整額の上限を撤廃しているケースもあり、燃料高騰時に電気代が想定以上に膨らむリスクがあります。
再エネ賦課金は、固定価格買取制度(FIT)を維持するための費用です。2025年度の単価は1kWhあたり4.18円で、全国一律に適用されます。2012年の制度開始以降、再エネ普及に伴い上昇傾向が続いています。
これら2つの費用は電力会社を変えても完全にはなくせませんが、太陽光発電による自家消費を増やすことで購入電力量を減らし、支払いを間接的に抑えることができます。

工場の電気代の内訳と削減アプローチ
削減施策を検討する前に、月々の電気代がどのような費用で構成されているかを把握しておきましょう。費用ごとに削減アプローチが異なるため、内訳を理解することで優先順位を立てやすくなります。
費用項目 | 計算方法 | 削減アプローチ |
|---|---|---|
基本料金 | 契約電力(kW)×単価 | デマンド管理・力率改善 |
電力量料金 | 使用量(kWh)×単価 | 省エネ設備・稼働シフト・太陽光 |
燃料費調整額 | 使用量(kWh)×調整単価(毎月変動) | 使用量削減・太陽光自家消費 |
再エネ賦課金 | 使用量(kWh)×3.98円 | 使用量削減・太陽光自家消費 |
基本料金:デマンド値と力率の2つが影響する
高圧電力の基本料金は「契約電力(kW)×単価」で計算されます。契約電力は前述のとおり過去12ヶ月の最大デマンド値(30分間の平均使用電力量)によって決まります。工場の電気代に占める基本料金の割合は20〜40%程度になることが多く、デマンド管理の取り組みが特に重要です。
基本料金には「力率割引・割増」という制度も関係します。力率とは、供給された電力がどれだけ有効に使われたかを示す指標です。力率が85%を超えると割引が適用され、85%未満では割増料金が発生します。力率の改善については、後述する「⑦力率改善」で説明します。
電力量料金:使用量と単価の両方に着目する
電力量料金は「使用量(kWh)×電力量単価」で計算されます。例えば工場において、生産量を増やすために機械の稼働時間を伸ばせば、電力の使用量も増えます。その他、設備の経年劣化による効率低下も、使用量増加の要因の一つです。
電力量単価は電力会社・プランによって異なります。季節別・時間帯別に単価が変わるプランでは、工場の稼働時間を夜間や休日の単価が安い時間帯にずらすことで電力量料金を抑えられます。
工場の電気代削減方法8選(効果の大きい順)
工場の電気代削減方法は多岐にわたります。初期コストと削減効果のバランスを考え、取り組む順番を決めることが重要です。まずコストゼロで始められる施策に着手し、効果を確認しながら段階的に設備投資へと進む方針がおすすめです。
この章では、効果の大きい順に電気代の削減方法をご紹介していきます。
削減方法 | 初期コスト | 削減効果目安 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
①デマンド管理 | 数十万円〜 | 基本料金10〜30%削減 | 高圧契約(50kW以上) |
②電力会社の切り替え | ほぼ0円 | 電気代全体5〜15%削減 | 全施設 |
③生産設備インバータ化 | 数十万〜数百万円 | 対象設備の消費電力30〜50%削減 | 工場・製造業 |
④稼働時間シフト | 0円(運用変更のみ) | 夜間単価分の削減 | 深夜・早朝稼働が可能な工場 |
⑤空調設備の最適化 | 0円〜数百万円 | 空調費10〜40%削減 | 全施設 |
⑥照明のLED化 | 数十万〜数百万円 | 照明費50〜85%削減 | 全施設 |
⑦力率改善 | 数十万円〜 | 基本料金数%削減 | 高圧契約(力率85%未満の施設) |
⑧太陽光発電+蓄電池 | PPAなら0円〜 | 電力量料金20〜40%削減 | 屋根・敷地に設置スペースがある工場 |
①デマンド管理でピーク電力を抑制する
高圧契約の工場にとって、最も即効性と費用対効果に優れた施策がデマンド管理です。基本料金は「過去12ヶ月の最大デマンド値(30分間の平均電力)」で決まるため、このデマンド値を管理することで基本料金を継続的に下げることができます。
デマンド管理の基本的な考え方は、「30分単位のピーク電力を更新させないこと」です。一度デマンド値が更新されると、その後12ヶ月間は高い基本料金が続きます。たとえ一度きりの更新でも影響が長く続くため、日々の電力管理が欠かせません。
具体的な取り組みは、コストごとに以下の3段階で進めることができます。
1.【コストゼロ・運用改善】
コンプレッサ・大型プレス機・溶接機などの大型設備の起動時間をずらし、同時起動を避ける。起動時に電力が集中しないよう、現場スタッフが意識的に管理する体制を作る。
2.【低コスト・監視体制の整備】
電力監視システムを導入し、30分デマンド値をリアルタイムで把握する。設定した上限値に近づいたら警報を出し、現場が自発的に電力消費を調整できる仕組みを作る。
3.【設備投資・自動制御】
デマンドコントローラーを導入し、デマンド値が設定値に近づいた際に空調・照明・充電設備などの非優先設備を自動制御する。導入費用は数十万円程度が目安で、1〜3年での回収が見込めるケースが多い。なお、デマンドコントローラーを導入する際は、生産ラインの稼働を妨げない制御設計が前提でとなります。優先度の低い設備から制御対象を選定し、現場の理解を得た上で運用することが成功のポイントです。
②電力会社の切り替え
2016年の完全自由化以降は低圧も含めたすべての需要家が電力会社を自由に選択できるようになりました。現在契約している大手電力会社から新電力に切り替えることで、電気代を5〜15%程度削減できる可能性があります。
切り替え手続き自体は難しくありません。新しい電力会社のWebサイトや担当者を通じて申し込み、スマートメーターの設定変更が完了すれば切り替えが終わります。基本的に設備工事は不要で、高圧契約の場合も通常1〜3ヶ月程度で完了します。
ただし、切り替えに際して必ず確認すべき点が3つあります。
1.燃料費調整額の上限設定の有無:
上限なしのプランは燃料高騰時に電気代が急増するリスクがあります。見積書に「燃料費調整額はエリア電力会社と同単価」と明記されているプランは比較的安心できます。
2.見積もり試算条件の統一:
高圧電力の見積もりは、デマンド値の試算方法が電力会社によって異なる場合があります。複数社に見積もりを依頼する際は、同じ条件で試算してもらうよう依頼しましょう。
3.電力会社の財務状況と供給実績:
2022〜2023年には多くの新電力が撤退・廃業しました。資本背景や供給実績を確認し、安定した事業者を選ぶ必要があります。③生産設備・コンプレッサのインバータ化
工場の消費電力の83%を占める生産設備への対策は、削減ポテンシャルが最も大きい施策です。特に効果が高いのが、コンプレッサ・ファン・ポンプ・送風機などのモーター駆動設備への「インバータ」の導入です。
インバータとは、モーターの回転数を負荷に応じて最適に制御する装置です。インバータがない従来の設備では、モーターは常に定格速度で稼働します。実際に必要な出力が少ない場面でも全力運転を続けるため、無駄な電力消費が生じています。インバータで回転数を実負荷に合わせて制御すると、消費電力を大幅に削減できます。
【インバータ省エネ効果の目安】
・コンプレッサのインバータ化:消費電力30〜50%削減
・ポンプ・ファンのインバータ化:回転数を20%下げると消費電力は約49%削減(消費電力は回転数の3乗に比例)
・導入費用:設備1台あたり数十万円程度(規模・台数による)また、10年以上前に導入した古い生産設備は、最新の省エネ型機器と比べて消費電力に大きな差があります。設備の更新タイミングが近い場合は、省エネ性能を重視した機器への切り替えも同時に検討してください。
④稼働時間のシフト(夜間電力の活用)
夜間の電力単価が安い料金プランを契約している場合、生産ラインの一部を夜間・早朝にシフトすることで電力量料金を削減できます。昼間と夜間で1kWhあたり10円以上の差があるプランも存在し、使用量が多い工場ではシフトだけで月に数十万円規模の削減につながることがあります。
また、夏場の日中は外気温が高く、工場内の冷却・空調に大きな電力が必要になります。早朝や夜間に稼働時間をシフトすることで、空調の負荷も同時に軽減できます。
ただし、従業員の勤務体制・安全管理・製品品質への影響を十分に検討した上で実施してください。まず現在の契約プランに夜間割引が設定されているかを確認することが前提です。
また、市場連動プランを契約している場合は逆のケースもあります。太陽光発電の普及により、晴天の昼間(特に10〜14時頃)に市場価格が低下し、夜間より昼間の方が安くなることがあります。この場合は昼間への稼働集中が有利になるため、自社の料金プランの種類を確認した上で稼働シフトの方向性を判断してください。
⑤空調設備の最適化とゾーニング
工場の電力消費の約17%を占める空調は、比較的取り組みやすい節電分野です。コストゼロで始められる運用改善から、設備更新まで幅広い対策が取れます。
まずコストゼロで実施できる対策として、以下が挙げられます。
・設定温度の適正化:
夏は28℃・冬は19℃(環境省推奨)を目安に管理すること。設定温度を1℃変えるだけで空調の消費電力を数%削減できます。
・ゾーニングの徹底:
稼働していないエリアや作業者がいない時間帯の空調を停止する。工場内をゾーン分けして管理することで、不要な冷暖房を排除できます。
・室外機のメンテナンス:
室外機の周辺に物を置かない。フィルターを定期的に清掃することで、空調効率が改善します。設備投資を伴う対策としては、古い空調設備を高効率のインバータ制御型に更新する方法があります。近年の省エネ空調は旧型と比べて消費電力を20〜40%削減できるケースもあります。また、デマンドコントローラーと空調制御を連携させることで、ピーク電力の自動管理にも活用できます。
⑥照明のLED化
工場の照明を白熱灯・蛍光灯からLEDに切り替えることで、照明にかかる消費電力を50〜85%削減できます。LEDは寿命が長いため、電球交換の手間とコストも大幅に減らせます。天井が高い工場では、高輝度のLED照明(Highbayタイプ)の活用が効果的です。従来の水銀灯やメタルハライドランプ等から交換することで、明るさを維持しながら消費電力を大きく下げられます。
ただし、工場全体を一度に交換するとコストが大きくなってしまいます。まず消費電力が多い高天井エリアや長時間点灯しているエリアから優先的に対応することをおすすめします。なお、照明のLED化は国や自治体の省エネ補助金の対象になる場合があるため、ぜひ最新の公募情報を確認してください。
参考:資源エネルギー庁『各種支援制度』
⑦力率改善(進相コンデンサの導入)
高圧電力の契約には「力率割引・割増」という制度があります。家庭の電気代にはない、高圧特有の仕組みです。
力率とは、電力会社から供給された電力(皮相電力)のうち、実際に機械を動かす仕事に使われた電力(有効電力)の割合のことです。力率が高いほど電力を効率的に活用できていることを意味します。
【力率割引・割増の仕組み(一般的な高圧契約の場合)】
・力率85%超:超過1%ごとに基本料金を0.5%割引
・力率85%未満:不足1%ごとに基本料金を0.5%割増
※ 電力会社によって割引率が異なる場合があります現在の力率は検針票に記載されています。力率が85%を下回っている場合は、受変電設備(キュービクル)に「進相コンデンサ」を設置することで改善できます。導入費用は規模によって異なりますが、数十万円程度が目安です。一度設置すれば継続的に割引が適用されるため、長期的な削減効果が見込めます。
⑧自家消費型太陽光発電+蓄電池の導入
工場の屋根や敷地に太陽光パネルを設置し、発電した電力を自社内で消費する「自家消費型太陽光発電」は、中長期的な電気代削減の切り札です。
自家消費を増やすことで電力会社からの購入量が減り、電力量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金をまとめて削減できます。昼間の稼働時間が長い工場との相性が特に良く、発電量と電力需要のタイミングが自然に一致しやすいです。
蓄電池を組み合わせると、昼間の余剰電力を蓄えて夕方以降のピーク時間帯に放電できます。デマンド値が設定値に近づいた際に蓄電池から補給することで、ピークカット効果も得られます。電力量料金と基本料金の両方を同時に削減できる点が、太陽光+蓄電池の大きな強みです。
ただし、太陽光パネルや蓄電池の購入にはコストがかかります。こうした初期費用が課題の場合は、PPA(電力購入契約)モデルを検討してください。PPA事業者が工場の屋根・敷地に設備を無償で設置・管理し、工場はその発電電力を通常より安い単価で購入する仕組みです。初期投資ゼロで導入できるため、資金面のハードルが低くなります。
また、自家消費型太陽光発電はCO2排出量の削減にもつながります。カーボンニュートラル対応が求められる製造業において、コスト削減と脱炭素経営を同時に実現できる施策として注目されています。

規模・業種別の削減施策の優先順位
ここまで8つの削減方法を見てきました。しかし、このつをすべて同時に進める必要はありません。自社の規模・稼働パターン・設備の状況に合わせて優先順位を決めることが、限られたリソースで最大の効果を得るポイントです。ここからは、工場の規模や業種ごとにおすすめの削減方法をご紹介します。
高圧契約の工場(50kW以上)の場合
デマンド値と力率を確認することから始めてください。デマンド値が高止まりしていれば「①デマンド管理」が最優先です。力率が85%未満なら「⑦力率改善」も並行して取り組む価値があります。これらは比較的低コストで着手でき、基本料金の継続的な削減につながります。
1.まず:デマンド管理の運用改善(コストゼロ)+電力会社の切り替え検討
2.次に:力率確認→進相コンデンサの導入
3.計画的に:生産設備のインバータ化・省エネ更新・LED化
4.中長期:太陽光発電+蓄電池の導入昼間稼働が中心の工場の場合
発電量と電力需要のタイミングが一致しやすいため、太陽光発電との相性が特に良いです。PPAモデルを活用した自家消費型太陽光の導入を早期に検討することをおすすめします。デマンド管理・省エネ設備との組み合わせで削減効果を最大化できます。
設備が老朽化している工場の場合
古い生産設備・コンプレッサは、最新機器と比べて消費電力に大きな差があります。設備更新のタイミングを活用して省エネ型へ切り替えることで、大幅な削減が期待できます。インバータの後付けが難しい場合は、設備更新時に省エネ性能を最優先の選定基準にしてください。
季節変動が大きい工場(食品・飲料・空調依存型)の場合
夏場のピーク電力管理が特に重要です。繁忙期に一時的にデマンド値が更新されることで、オフシーズンも高い基本料金が続くケースが多くあります。デマンドコントローラーの導入で夏場のピークを自動制御することが最優先施策です。
削減施策を始める前に確認すること
どの施策に取り組む場合でも、まず現状を正確に把握することが前提です。以下の2点を確認してから施策の優先順位を決めてください。
①検針票から「デマンド値」「力率」「使用量の推移」を確認する
高圧電力の検針票には、契約電力(デマンド値)・力率・当月の電力使用量が記載されています。過去12ヶ月分をまとめて確認することで、電力消費が多い季節・時間帯が把握でき、どの削減方法を優先すべきかが見えてきます。
スマートメーターが導入済みの場合は、30分単位の電力データを電力会社のマイページやシステムから取得できます。このデータを活用することで、デマンド値が上昇する時間帯や設備を特定できます。
②電気代の費用構成(基本料金と電力量料金の割合)を把握する
電気代全体に占める基本料金の割合が高い場合はデマンド管理・力率改善が優先課題です。電力量料金の割合が高い場合は省エネ設備への投資や太陽光発電の導入が有効です。
まず現在の請求書で各費用項目の金額を確認し、どの費用が最も大きいかを把握してください。そうすれば着手すべき施策を絞り込むことができます。
工場の電気代削減に関するよくある質問
Q. デマンドコントローラーの費用対効果はどのくらいですか?
導入費用の目安は数十万円程度です。削減できる基本料金の額によって異なりますが、1〜3年での回収を達成できるケースが多くあります。まず現在の基本料金とデマンド値を確認し、削減余地を試算してから導入を検討してください。
Q. 省エネ設備の導入に使える補助金はありますか?
経済産業省や環境省が実施する省エネ補助金を活用できる場合があります。LED照明・高効率空調・インバータ設備・太陽光発電などが対象になるケースが多いです。公募内容は毎年変わるため、最新情報を各省庁の公式サイトで確認してください。
Q. 電力会社を切り替えると設備工事は必要ですか?
基本的に不要です。スマートメーターが設置済みであれば工事なしで切り替えられます。スマートメーターが未設置の場合は電力会社が交換工事を手配します(通常費用は不要)。なお、高圧電力の切り替えは申し込みから完了まで1〜3ヶ月程度かかるのが一般的です。
Q. 太陽光発電を導入しやすい工場の条件はありますか?
広い屋根面積または設置可能な敷地があること、昼間の電力消費が多いことが導入に適した条件です。屋根の向き(南・東・西向き)や建物の構造強度も影響するため、導入を検討する際は専門業者に現地調査を依頼してください。PPAモデルを利用すれば初期費用ゼロで導入できるため、費用面のハードルが大きく下がります。
Q. 工場の電気代の月額はどのくらいが目安ですか?
業種・規模・稼働時間によって大きく異なります。契約電力100kW前後の小規模工場で月数十万円、500〜1,000kW規模の中型工場で月100万〜300万円程度が一般的な目安です。自社の電気代が同業種の平均と比べて高いかどうかを確認したい場合は、電力会社や省エネコンサルタントに相談することをおすすめします。
Q. インバータ化するとなぜ省エネになるのですか?
インバータがない従来のモーター設備は、負荷の大小にかかわらず常に定格速度(最大出力)で稼働します。実際の作業に必要な出力が少ない場面でも全力運転を続けるため、無駄な電力が生じてしまいます。インバータを導入することで、実際に必要な負荷に応じてモーターの回転数を細かく制御できます。消費電力はモーターの回転数の3乗に比例するため、回転数を少し下げるだけで消費電力を大幅に削減できます。たとえば回転数を20%下げると消費電力は約49%削減されます。特にコンプレッサ・ファン・ポンプは稼働時間が長く、インバータ化の費用対効果が高い設備です。

電気代削減を継続するための仕組みづくり
電気代削減は、一度対策を講じれば終わりではありません。設備の老朽化・生産量の変動・電力単価の変動など、電気代に影響を与える要素は常に変化しています。削減効果を持続させるためには、継続的なモニタリングと改善の仕組みを作ることが重要です。例えば、下記のような仕組みを社内に導入することが有効です。
月次でデマンド値と使用量を確認する習慣をつける
毎月の検針票が届いたら、次の3点を必ず確認してください。
- 契約電力(最大デマンド値)が前月・前年同月と比べて増えていないか
- 電力使用量(kWh)が生産量の変動と比べて適切な水準にあるか
- 燃料費調整額の単価が前月から大きく変動していないか
デマンド値が更新されていた場合は、その月の稼働状況を振り返り、どの設備・時間帯が原因だったかを特定します。同じことが繰り返されないよう、運用ルールや制御設定を見直すことが大切です。
省エネ目標を設定して社内で共有する
電気代削減を「担当者だけの課題」にしないことが重要です。経営層・現場リーダー・施設管理担当者が一体となって取り組む体制を作ることで、継続的な改善が生まれます。
そのために、具体的な目標値(例:今年度のデマンド値を昨年比10%削減・電力使用量を昨年比5%削減)を設定し、毎月の進捗を全員が確認できる形で共有してください。目標達成の見える化が、現場スタッフのモチベーション維持につながります。
専門家・コンサルタントを活用する
電気代削減の専門家やエネルギーコンサルタントに相談することで、自社では気づきにくい改善ポイントを発見できることがあります。30分デマンドデータの詳細分析・電力会社の比較見積もり代行・省エネ設備の費用対効果試算など、専門的な知見を活用することで、より確実な削減が実現しやすくなります。
複数の電力会社を比較する際も、専門家を通じることで条件を統一した正確な比較ができます。また、補助金の申請サポートを提供している事業者もあるため、上手に活用してください。
まとめ|工場の電気代削減は「デマンド管理」から始めよう
工場の電気代が高い構造的な理由は、
「生産設備が消費電力の83%を占めること」
「デマンド制度で30分のピークが1年間の基本料金を決めること」
「燃料費調整額・再エネ賦課金が使用量に比例して増えること」
の3点です。
そして削減方法の優先順位は、以下の流れで進めることをおすすめします。
1.高圧契約の工場はまずデマンド管理に取り組む。最大デマンド値を下げることで基本料金を継続的に削減できる
2.電力会社の切り替えは手軽で即効性がある。燃料費調整額の条件を必ず確認した上で進める
3.生産設備のインバータ化・省エネ更新で消費電力そのものを減らす
4.力率が85%未満であれば、進相コンデンサの導入を優先する
5.中長期では太陽光発電+蓄電池が電力量料金と基本料金の両方を削減できる最も効果の大きい手段先に述べた通り、電気代削減は一度取り組めば終わりではありません。継続的なモニタリングと改善が必要です。まずは検針票でデマンド値・力率・使用量の推移を確認し、自社の「無駄なピーク電力」がどこにあるかを特定することから始めてみましょう。
法人の電力契約を見直してみませんか?
法人向けの電力契約は、料金単価だけでなく、燃料費調整額や市場価格、契約条件まで含めて比較することが重要です。
デジタルグリッドでは、企業ごとの電力使用状況に合わせて、電気料金の見直しや電力調達を支援しています。
現在の契約内容に不安がある方や、電気料金の請求書の見方がわからない方も、お気軽にご相談ください。
この記事の著者

デジタルグリッド編集部
日本初の民間企業による電力取引市場「Digital Grid Platform」の運営
デジタルグリッドのメンバーが執筆・監修しています。電力に関する基礎知識や再エネに関するコンテンツをみなさまにお届けしています。ご不明点などがあればお気軽にご相談ください。