
電気の法人契約とは?個人契約との違い・手続きの流れ・料金の仕組みを解説
新規開業・オフィス移転・テナント入居などで、法人として電気を契約する際、「個人契約と何が違うのか」「どんな書類が必要なのか」「低圧と高圧のどちらになるのか」と戸惑う担当者も少なくありません。
この記事では、法人向け電気契約の仕組みや個人契約との違い、契約種別の判断基準、申し込み手続きの流れ、料金の仕組みまで、開業・移転・切り替えの3つのシーンに分けてわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 法人電気契約と個人契約の違い
- 低圧・高圧・特別高圧の判断基準と手続きの流れ
- 法人向け電力会社の選び方と注意点
法人電気契約と個人電気契約の違い
法人契約と個人契約の違いは、「契約種別と電力使用量」「料金体系」「申し込み手続き」の3点(+キュービクルの有無)に集約されます。まずこの全体像を把握した上で、各ポイントを詳しく見ていきましょう。
比較項目 | 個人契約(家庭用) | 法人契約(事業用) |
|---|---|---|
主な契約種別 | 低圧(従量電灯) | 低圧〜特別高圧(規模による) |
電力使用量の目安 | 月200〜600kWh程度 | 規模・業種によって大きく異なる |
料金体系 | 低圧:契約容量などに応じた基本料金 | 高圧・特別高圧:契約電力に応じた基本料金 |
申し込み手続き | 本人確認書類のみ | 法人情報や設備資料などを求められる場合がある |
高圧受電設備(キュービクルなど) | 不要 | 高圧受電では受変電設備が必要 |
違い①:契約種別と使用電力の規模
一般家庭の電力契約は、ほぼすべて低圧(電圧600V以下)です。一方、法人の場合は施設の規模・業種に応じて低圧から特別高圧まで、複数の契約種別から選ぶことになります。
飲食店・小規模オフィスのような小さな事業所であれば低圧契約で対応できますが、工場・病院・大型商業施設になると高圧契約が必要になります。自社がどの契約種別に該当するかは、後述する「契約電力50kW」という目安で判断できます。
違い②:料金体系(デマンド料金の有無)
個人向けの低圧契約では、契約アンペアや契約容量、最低料金などをもとに基本料金が決まる料金体系があります。
一方、高圧契約のうち実量制が適用される契約では、30分間の平均電力から算出される最大需要電力(デマンド値)が契約電力に影響します。
違い③:申し込み手続きと必要書類
個人契約でも、必要な情報・書類は電力会社によって異なります。Webや電話で手続きできるケースが一般的です。
法人契約で必要な情報・書類は、電力会社や契約種別によって異なります。高圧では、単線結線図など電気設備に関する資料の提出が必要になる場合があります
法人電気契約の種類:低圧・高圧・特別高圧
法人の電気契約は、使用する電力の規模に応じて3つの区分に分かれます。「自社はどの区分に該当するか」を最初に判断することが、スムーズな契約手続きへの第一歩です。
区分 | 電圧 | 契約電力の目安 | 主な対象施設 | 高圧受電設備(キュービクルなど) |
|---|---|---|---|---|
低圧 | 600V以下 | 50kW未満 | 小規模オフィス・飲食店・小売店・小規模工場 | 不要 |
高圧 | 600V超〜7,000V以下 | 50kW〜2,000kW未満 | 中規模ビル・工場・病院・学校・スーパー | 必要 |
特別高圧 | 7,000V超 | 2,000kW以上 | 大型工場・百貨店・データセンター・鉄道 | 必要(大型) |
低圧電力(契約電力50kW未満)
個人の家庭用電気と同じ送電線・電圧(100V・200V)で供給を受ける区分です。小規模なオフィス・飲食店・美容室・小売店など、電力使用量が比較的少ない事業所が対象になります。
高圧受電設備(キュービクルなど)の設置が不要で、手続きも低圧のほうがシンプルです。Webや電話で申し込みができ、必要書類も高圧と比べてシンプルなケースが多いです。電力会社の選択肢も豊富で、新電力への切り替えも容易です。
「低圧電力」の中でも、一般照明・コンセント向けの「低圧電灯」と、業務用エアコン・冷蔵庫・製造設備向けの「低圧電力(動力)」に分かれます。動力契約は電灯契約と別に申し込みが必要なケースがあります。事業用途によって契約の種類が変わるため、電力会社に相談の上確認してください。
高圧電力(契約電力50kW以上〜2,000kW未満)
電力会社から6,600Vで受電し、構内のキュービクル(受変電設備)で各設備に適した電圧(100V・200Vなど)に降圧して使う区分です。中規模以上のビル・工場・病院・学校・大型スーパーなどが対象です。
自家用電気工作物では、原則として電気主任技術者の選任が必要です。一定の要件を満たす場合は、外部委託承認制度を利用して保安管理業務を外部に委託できます。
高圧契約のうち実量制が適用される契約では、最大需要電力(デマンド値)が契約電力に影響します。月次のピーク電力(デマンド値)の管理が電気代最適化の重要な要素になります。高圧電力の仕組みについて詳しくは「電気 高圧」の関連記事もあわせてご参照ください。
特別高圧(契約電力2,000kW以上)
7,000Vを超える高電圧で直接受電する区分です。大型工場・百貨店・データセンター・鉄道事業者など、極めて大規模な電力需要を持つ施設が対象になります。
電力会社との個別協議による契約になるため、一般的な事業者が該当するケースは多くありません。新規開業や通常のオフィス・工場の移転では、ほとんどの場合で低圧か高圧が対象になります。

自社はどの区分?判断の目安
契約電力50kW未満/以上は、低圧・高圧を分ける代表的な基準です。ただし、実際の契約電力や受電電圧は、設備構成や供給条件などを踏まえて決まります。
【手続きフロー】法人電気契約の申し込み方法
法人電気契約を行う場合、どのような流れで手続きが進行していくのでしょうか。開業・移転・切り替えの3つのシーン別に、手続きの流れと注意点を整理します。
開業・新規オフィス開設の場合
初めて事業所の電気を契約する場合、引越し・入居の1〜2週間前には申し込みを済ませることをおすすめします。特に高圧の場合は手続きに時間がかかるため、さらに早めの対応が必要です。
【開業時の手続きフロー(低圧の場合)】
①入居予定の建物の電気設備を確認(既存のメーター・ブレーカー容量)
②電力会社を選定し、必要書類を準備する
③電力会社のWebサイト・電話・窓口で申し込み
④スマートメーターの設置(未設置の場合は電力会社が手配)
⑤使用開始日に開通確認 → 電気の使用開始
【目安期間】申し込みから開通まで:1〜2週間程度新たに高圧受電設備を設ける場合は、キュービクルなどの受変電設備の設計・設置工事が必要になります。キュービクルの工期は規模によって異なりますが、1〜3ヶ月程度かかることがあります。新築・大規模改装の場合は、建物の設計段階から電力会社に相談しておくことをおすすめします。
移転・テナント変更の場合
事業所を移転する場合は、旧住所の解約と新住所の開通申し込みを同時に進めます。
【移転時の手続きフロー】
①新住所の電力会社を選定し、開通希望日と必要書類を準備
②新住所への申し込み(開通希望日の1〜2週間前を目安に)
③旧住所の解約申し込み(解約希望日を指定)
④移転当日:新住所で電気の使用開始・旧住所の解約完了
※ 新旧の電力会社が同じ場合でも、「住所変更」ではなく「解約+新規開通」の手続きが必要なケースが多い移転当日に電気が使えないという事態を避けるため、引越し準備と並行して早めに手続きを始めることが大切です。特に高圧の場合は申し込みから開通まで1〜3ヶ月程度かかることがあるため、計画段階から電力会社への相談を始めてください。
電力会社を切り替える場合
すでに電気を使用している事業所で電力会社を変更する場合、手続きはシンプルです。
【電力会社切り替えのフロー(低圧)】
①切り替え先の電力会社のプランを比較・選定
②切り替え先の電力会社に申し込む
(必要情報:現在の電力会社名・供給地点特定番号・お客さま番号 ← 検針票で確認)
③必要に応じて旧電力会社の解約手続きを確認
④スマートメーターの設定変更(必要な場合は電力会社が手配)
⑤切り替え完了(通常1〜4週間程度)
高圧の場合:申し込みから切り替えまで1〜3ヶ月程度かかる高圧電力でも、小売電気事業者の切り替えだけであれば、通常は既存の受変電設備を継続して使用します。ただし、設備変更や契約条件によって必要な手続きが異なるため、事前に確認してください。
申し込みに必要な書類一覧
法人の電気契約では、電力会社や契約種別によって、法人情報や設備に関する資料の提出を求められる場合があります。代表的な例は以下のとおりです。
書類の種類 | 備考 |
|---|---|
法人登記事項証明書(登記簿謄本) | 発行から3ヶ月以内が多い |
代表者の印鑑証明書 | 電力会社による |
建物の使用権限証明(賃貸借契約書など) | 所有の場合は建物謄本 |
担当者の身分証明書 | 運転免許証・マイナンバーカードなど |
電気設備図(単線結線図) | キュービクルの設計図 |
電気主任技術者の選任届または委託契約書 | 保安管理の証明 |
上記はあくまで一般的な目安です。電力会社や契約プランによって必要書類が異なりますので、申し込み前に選定した電力会社に必ず確認することをおすすめします。
法人の電気料金の仕組み
低圧と高圧では基本料金の決まり方が根本的に異なります。法人電気契約の料金体系を理解することで、電気代削減の方向性が見えてきます。
低圧契約の料金構成
低圧契約の電気料金は、「基本料金+電力量料金+燃料費調整額+再エネ賦課金」の4つで構成されます。個人の家庭用と同じ構成です。
- 基本料金:契約アンペア数(アンペア制)または最低料金(最低料金制)で決まる固定費。エリアによって方式が異なる
- 電力量料金:使用量(kWh)×電力量単価で計算される変動費
- 燃料費調整額:燃料価格の変動に応じて毎月変わる調整費。使用量に比例する
- 再エネ賦課金:再生可能エネルギー普及のための費用。2026年度は1kWhあたり4.18円
低圧での節約は、主に「アンペア数の最適化(基本料金の削減)」と「使用量の削減(電力量料金の削減)」の2つがアプローチになります。使用量が少ないのに大きなアンペア数で契約していると基本料金の無駄が生じます。現在の契約内容と実際の使用状況を照らし合わせ、適切なアンペア数かどうかを定期的に確認してください。
高圧契約の料金構成(デマンド料金)
高圧契約では、契約電力をもとに基本料金が算定されます。実量制が適用される契約では、最大需要電力が契約電力の決定に影響します。
【高圧電力の基本料金計算式(実量制・500kW未満の場合)】
基本料金 = 契約電力(kW) × 基本料金単価(円/kW)
契約電力 = 当月を含む過去12ヶ月の最大デマンド値(kW)
デマンド値 = 30分間の平均電力(最大値が年間を通じて基本料金に影響)実量制が適用される高圧契約では、デマンド管理は代表的な基本料金削減策の一つです。一度高い最大需要電力を記録すると、その値が当月を含む過去12か月の比較対象に含まれる間、契約電力に影響します。
力率割引・割増の仕組み
高圧以上の契約には、「力率割引・割増」という制度があります。力率とは、供給された電力のうち実際に仕事に使われた電力の割合です。
力率85%を基準として、上回る場合に基本料金を割り引き、下回る場合に割増する料金体系があります。具体的な条件は電力会社・料金プランによって異なります。
力率が低下している場合は、キュービクルに「進相コンデンサ」を設置することで改善できます。現在の力率は検針票に記載されているため、定期的に確認することをおすすめします。

法人電気契約の選び方・比較のポイント
電力自由化により、法人事業者は大手電力会社以外の新電力からも電気を購入できます。ここでは比較・判断のポイントを整理します。
燃料費調整額の上限設定を確認する
電力会社を比較する際に最も重要なチェックポイントの一つが、燃料費調整額の上限設定の有無です。上限設定がないプランは、燃料価格が高騰した際に電気代が想定以上に増加するリスクがあります。
燃料費調整額や市場価格調整額などの算定方法、上限の有無を確認し、年間総額で比較することが重要です。
基本料金と従量料金のバランスを見る
電力使用量が多い事業者は、電力量料金の単価が安いプランを選ぶことで削減効果が大きくなります。一方、電力使用量が少ない事業者は、基本料金の低いプランを優先することで固定コストを抑えられます。
まず自社の月次電力使用量の傾向を把握した上で、基本料金と電力量料金のどちらを重視するかを判断してください。複数のプランで年間の総額を試算してから比較することをおすすめします。
法人電気契約で注意が必要なケース
一般的な申し込み手順に加えて、状況によっては特別な対応が必要なケースがあります。事前に確認しておくことでトラブルを防げます。
テナント入居時は「一括受電」かどうかを確認する
ビル・マンション・商業施設の一部テナントとして入居する場合、建物全体が「高圧一括受電」を採用しているケースがあります。一括受電とは、ビルオーナーや管理会社が建物全体を高圧で受電し、各テナントに分配する仕組みです。
高圧一括受電の物件では、入居者が個別に電力会社を選ぶことができません。「電力自由化で好きな会社を選べる」と思っていても、一括受電物件では選択肢がなくなります。契約前に管理会社に確認してください。
個人事業主の法人契約について
法人格(株式会社・合同会社など)がない個人事業主でも、事業用の電気契約(業務用電力)を申し込めます。この場合、登記事項証明書の代わりに開業届の写しや確定申告書などで事業実態を証明する書類が必要になることがあります。必要書類の詳細は各電力会社に確認してください。
閉店・廃業時の解約手続き
事業所を閉店・廃業する際は、電力会社に解約の申し込みが必要です。解約を忘れると、使用していない期間も基本料金が発生し続けます。閉店・退去日の1〜2週間前には解約申し込みを済ませておきましょう。高圧の場合は、キュービクルの撤去・廃棄手続きも別途必要になることがあります。
法人電気契約に関するよくある質問
Q. 個人事業主は法人契約できますか?
できます。法人格がなくても、事業用の電気として契約できます。必要書類は法人の場合と異なり、開業届の写し・確定申告書など事業実態を示す書類が求められることが多いです。電力会社ごとに要件が違うため、申し込み前に確認してください。
Q. テナントで電気を個別に契約できますか?
物件によって異なります。建物が「高圧一括受電」を採用している場合は、入居者が個別に電力会社を選ぶことができません。個別契約が可能かどうかは、入居前にビルオーナーや管理会社に確認してください。
Q. 電気の法人契約に審査はありますか?
審査の有無や内容は電力会社・料金プランによって異なります。法人情報や支払方法などの確認が行われる場合があります。
Q. 法人の電気契約で複数拠点をまとめて管理できますか?
電力会社によっては、複数拠点をまとめて管理できる法人向けサービスを提供しているケースがあります。一括請求・使用量の一元管理・まとめて見積もりといったサービスが利用できる場合があります。複数拠点を持つ企業は、そのようなサービスを提供している電力会社を選ぶことでコスト管理が効率化されます。複数拠点の電力をまとめて交渉することで、単拠点より有利な料金条件を引き出せるケースもあります。
Q. 高圧から低圧に変更(ダウングレード)はできますか?
できますが、注意が必要です。契約電力が大きく減った場合(設備の縮小・移転など)は低圧に変更できる可能性があります。ただし、高圧用に設置したキュービクルの扱い(撤去・廃棄など)が別途発生します。電力会社と相談の上、変更の可否と手続きを確認してください。キュービクルの撤去工事には費用がかかる場合があるため、変更を検討する際はトータルコストを見積もってから判断することをおすすめします。

まとめ|まず自社の規模を確認して契約種別を選ぼう
法人電気契約について、重要なポイントを整理します。
- 個人向け・法人向けでは使用規模や契約内容、手続きが異なる。高圧契約では契約電力の確認が重要
- 低圧・高圧の区分は50kWが一つの目安だが、設備構成や供給条件などによって異なる
- 開業・移転時の必要期間や必要書類は契約種別・設備状況・電力会社によって異なるため、早めに確認する
- テナントでは一括受電の有無を確認する
- 電力会社を比較する際は、料金単価だけでなく燃料費調整・市場価格調整・契約期間・解約条件・サポート体制などを確認する
まず自社の電力使用規模を把握し、低圧か高圧かを確認することが法人電気契約の第一歩です。開業・移転・切り替えのどのシーンでも、余裕をもったスケジュールで手続きを進めることが重要です。
燃料費調整額や市場価格調整額の条件、契約期間、解約条件、サポート体制などを含めて年間総額と契約条件を比較していきましょう。
【法人の電力契約を見直してみませんか?】
法人向けの電力契約は、料金単価だけでなく、燃料費調整額や市場価格、契約条件まで含めて比較することが重要です。
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現在の契約内容に不安がある方や、電気料金の請求書の見方がわからない方も、お気軽にご相談ください。この記事の著者

デジタルグリッド編集部
日本初の民間企業による電力取引市場「Digital Grid Platform」の運営
デジタルグリッドのメンバーが執筆・監修しています。電力に関する基礎知識や再エネに関するコンテンツをみなさまにお届けしています。ご不明点などがあればお気軽にご相談ください。